イレギュラーによる解決と変遷

「・・・一先ず区切りもついたところで君の今後については置いておき、工藤君から頼まれた事についてを先に片付けよう。あまり遅くなると向こうが痺れを切らすかもしれないし、薬が出来て組織が潰れるまでは彼に君が隠し事をしているとバレるのは都合が善くないしね」
「えぇ、じゃあまたパソコンを使わせてもらうわ」
それで話を一区切りして新一への対処をしようと口にする蔵馬に、灰原は頷いてからパソコンのある部屋の方へ向かう。蔵馬はその姿に微笑を浮かべた後に自身の携帯を取り出す。コエンマに加えてこういう時に協力してくれる仲間の一人に連絡しようと・・・


















・・・それからしばらくして灰原から薬が出来たと聞かされた蔵馬は下準備を進めていた組織の壊滅を行うことにした。バーボン改め、降谷零に組織の壊滅に乗りきらせる形でだ。

と言っても蔵馬自身は組織の壊滅の際にはほとんど手を出していない。あくまで蔵馬は組織の施設を内密に訪れ薬のデータを消していき、組織の長にジンにウォッカを始めとした厄介なコードネーム持ち達を捕らえ、ジンの携帯から降谷の携帯に主だった組織の施設の場所にこいつらの居場所はここだと明示した捕縛状態の画像つきメールを送っただけだ。

まぁ降谷も最初はその画像とメールの中身を信じられず、ジンの携帯にすぐさまに電話してきた為に妖狐化して答える形を取った。声だけから『南野秀一』を簡単に特定出来るとは蔵馬も思ってはいないが、やたらとそう言ったことには運回りがいい人物ばかりが米花町に集まっている事から全く有り得ないということはないと念には念を入れてだ。

そうして降谷からやたらと疑いを向けられる形で話をされた蔵馬だが、少しは会話をしつつも要点としてジン達を何事もなく捕らえられるチャンスはここしかないということに加え、組織を潰せるチャンスはここを除けばまずまともには訪れないというように伝えてさっさと携帯を切って電源を落としてジンの胸元に置いておいた。降谷の話に付き合っても蔵馬からすればろくに得にはならない上、疑いはしてもジン達の捕縛を一斉に出来るかもしれない機会を逃すようなことを降谷もしないだろうと見越してだ。

現に蔵馬はそれから少し時間が経った後、降谷が公安を引き連れジン達の捕縛に来たのを姿を見せない状態にした中で見届けた。どこか苦々しい表情で指揮を取る降谷の姿を確認する形でだ・・・おそらく正体不明の人物からの情報提供及びジン達の捕縛というかなり難しいことをあっさりやってのけ、公安の自分の正体も知った上での協力行為をしてきた謎の人物への様々な思いが心中で入り乱れていたのだろうと蔵馬は見ていた。






・・・そうしてジン達が公安に連れていかれたのをきっかけに、組織は瞬く間に崩壊の一途を辿ることになった。やはり組織の長や主だったコードネーム持ち達が一斉にいなくなったこともそうだが、組織に長い間入り込んでいて蔵馬からの情報も色々と得ている降谷の指揮があってのことでだ。現にどの施設もろくに公安相手に手も足も出ず制圧されていき、怪我人はまだしも死傷者が一人もいないままに降谷達は動いていった。

ただ一応組織の支部は海外の方にもあったのだが、そちらはFBIにCIAと言った海外の機関に降谷は不満そうながらも任せることとした。その二つの組織と違い、公安はあくまで日本が主な活動の舞台であり日本人が主体ということもあって海外で活動するには色々制限があったために。

ただそんな中でも海外に向かう形で蔵馬は動いていた。とは言え正規に手続きを取って飛行機や船に乗る形で海外に行けば何らかの疑いから捜査の目が自分に向けられた場合に面倒だと思った為、妖狐化して人に見えないようにして飛行機に乗る形を取ってだ。ただ一応コエンマにはその事については断りを入れてはおいた・・・事情があるとは言え犯罪であることには変わりはないし、人の口に戸は立てられないという危惧を伝える形でだ。

そうしてコエンマに断りを入れて海外の組織の支部の機械の中にあるデータを次々に消していったが、実際のところは拍子抜けするくらいに簡単に事を済ませる事が出来た・・・元々の薬を開発していたシェリーだった灰原がいなくなったことで改善に発展が望まれなくなった薬のデータに、一々注目するような人物など組織の中にもいなかったためにだ。その為、蔵馬は知らないことだが後々に薬のデータが消えたことを把握していた者など組織の人間は誰一人としていなかったのである。






・・・そういった形で組織を潰すことに薬のデータを全て削除することが出来た蔵馬は、少しして灰原から連絡を受けた。完成した解毒薬を飲んで数日経ったけど、また小さくなるような兆候も痛みもない事から完全に元の体に戻ったと言った連絡を。









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