イレギュラーによる解決と変遷

「・・・今となって改めて思い返すと、本当に工藤君の運回りって異常だったのね・・・そしてそんな異常な運回りが彼の判断に考えを促進していた・・・」
「運も実力の内だとは言うが、彼は自分が運に頼ってはないと思った上で運を自分の実力だと思っている節がある。矛盾しているようだが、俺の言っていることは君の方が理解しているんじゃないかな?」
「えぇ。そして彼は決してそうだとは認めはしないでしょうけど、だからこそ彼が自重を覚えるとも思えないのよね・・・」
「そういった意味で彼が自重を覚える事が出来るとしたなら、自分が被害を受けるのではなく周りが自分のせいで取り返しのつかない事態にならないとまず無理だろうな・・・運も何も通用しない状況で身近な誰かが目の前で殺されるくらいの状況がなくてはな」
「・・・それは・・・」
そうして話題は新一の運回りについてのすごさに行くのだが、蔵馬が改善の為には誰かの犠牲がないならと幽助と戸愚呂の時の事を思い出しながら実感を込めた言葉を口にしていくと、灰原は複雑そうな表情を浮かべる。
「・・・彼が悪人ではないことは確かではあるだろう。だが彼は自分の痛みでは止まれないし、誰かが自分のせいで実際に傷付く事がなければ自分の誤りを感じることは出来ない。だがそれも運回りからそれを避けることが普通になっている上、そうなったなら彼がそのダメージを乗り越える事が出来るか・・・正直な話として、実感が込み上げてくればくるほどに彼は立ち直れなくなっていくだろうと俺は思うよ」
「・・・そうならない方がいいというのは分かるけど、そうでもないと工藤君は変わらないのね・・・」
「あぁ。だから新一君と組織が潰れて体が戻った後でも関わるならそれを承知で関わらなければならないが、君はそうするつもりはあるか?」
「・・・いいえ、そのつもりはないわ。組織が潰れて元の体に戻るなら私が工藤君と一緒にいなければならない理由はないし、もうそうしたいと思えないもの・・・貴方の話を聞いてからね」
「それは彼に愛想を尽かしたという意味でかい?」
「・・・彼に対して愛想を尽かしたのではなく、自分自身の気持ちに気付いたのよ。彼に付いていけないというか、彼に対する気持ちが自分の中から無くなっていることにね・・・」
その話から新一が変わるならと仮定する蔵馬に灰原が事が済んだなら新一に以降は関わる気はないと言い、遠くを見るような表情を浮かべる。
「・・・別に彼の事が嫌いになったとかそういうことじゃないわ。ただ貴方と会ってからこうして正体を明かしてもらった上で協力をしてもらっているけれど、貴方が妖怪であることに出来ることの幅があることを差し引いても彼の無謀さがあまりにも際立ってしまってる事が目につくようになったのよ。それこそ完全な薬が出来たならこれで組織と真っ向から堂々と対峙出来るし高校にも通えると、何の対策も考えもないままに動くだろうとの貴方の言葉からね・・・」
「実際に彼は体があの時の試作薬が予想外に持ったのもあって、体が戻る前に何の警戒もなく学校に通ったからね・・・組織が潰れる前に体が元に戻れば確実に彼は調子に乗る。自分の体で今までのように隠れて行動するのではなく堂々と組織を叩き潰せると、周りに何か起きるかもしれないと考えることなく・・・いや、自分ならどうにか止めれられるとでも根拠のない自信でタカをくくってね」
それでいかに灰原は気持ちが離れたのかを蔵馬の話にあると言い、蔵馬もまたそうなるであろうと再度告げる。新一は確実にこうするだろうと。









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