いつかを変えることの代償 中編

「大方新一の行動に関してはさっき話したが、あいつが素直に事実を話さなかったことに関しちゃ助言をした阿笠博士に間違いはなかったとは思っちゃいる・・・が、それで俺だったり色んな奴らを始めとして自分が組織の奴らの悪行を暴くためにって自覚の有り無しがどうかはともかく巻き込んだことに関しては、ハッキリ言って今となっちゃ気分が良くねぇんだ。実際に銃で殺されてたかもしれない瞬間があったと聞いた身としちゃな」
「・・・その行動について、貴方は勝手さを感じたと」
「あぁ・・・あいつが行動したからあの組織が滅びたんだとしても、その行動と言うか原動力は自分が組織を壊滅させて自分の力で元に戻りたいって言うこだわりからくるもんで、自分がこうしたいって気持ちだけで動いていた。自分がこうなったことを阿笠博士にだけじゃなく優作さん達に真っ先に報告して対処してもらえば、違う結果と言うかやり方があったかもしれないのに自分でやるって言う形でだ・・・だがそういったように言いながらも新一は何も言わずに俺だったりを利用してきて、時たま他の奴も含めて危うい目にも合わせてきた。そしてそれを阻止したんだなんて風に言ってきたが・・・結局新一は自分がしたいようにしてそういった結果にしたいって事ばっかりしか頭にねぇんだ、自分のおかげで終わったからその過程でどんな風になったかにどう思われるかには考えを行かせない形でな・・・そんな新一だから俺の手助けなんか必要ねぇって思ったんだ。いざとなりゃ事件の解決の為に俺でも何でも使いかねねぇ奴にはな」
「・・・辛辣ではありますが、麻酔銃で何も知らない貴方を眠らせて事件解決の探偵役に仕立て上げてきた事を考えれば、確かにそれを否定出来る要素はありませんね」
そこから小五郎が新一の勝手さについて自分の思うことを口にしていき、明智も眼鏡を押さえながら同意する。新一の行動は確かに勝手であると。






・・・そもそも新一が組織に対抗すると決めたのは、組織の人間に関わって幼児化させられたことに対して自分で奴らを捕まえて自分の元の体に自分の手で戻りたいと言う、自分がやらなきゃ気がすまないとのこだわりからだ。だがそれは新一がやらねば絶対に組織を壊滅出来なかったかと言えば、そういう話ではない。

小五郎が言ったように親である優作達に言えば解決の為に別の観点から動いて結果を出していた可能性もあったし、FBIにCIAに公安と組織を追っていた面々がいずれ組織を壊滅に追い込んでいた可能性もまた否定出来ない。

と言うよりはそもそもを言うなら、コナンから新一に戻る為の過程の中にはそんな面々と知り合うことがなければ新一は組織を壊滅に導くどころか、逆に殺されていた可能性すらあったのだ。だが新一は自分の存在があったからこそ所属に立場の違う面々と協力してもらうことになり、自分がやらなかったら組織の壊滅は有り得ないとは言わずとも長期化していたと考えていた事だろう。自分が組織を追う動機は正義感以上に、自分をこんな体にした相手と言う復讐心にも似た気持ちが入り混ざっている・・・いや、むしろ個人的な事情に気持ちがほとんどを占めている事については深く考えることもなくだ。






「・・・まぁそれも米花町から離れてこの不動町に来た事で、新一に巻き込まれる事はまず無くなったと思うがな。結婚もしてねぇし、蘭も生まれちゃいねぇからまずあいつと俺が結び付くような事もねぇ・・・ただこういう事を話したり考えてしまうとどうしても思っちまうんだよな・・・自分の考えの為に蘭を今度は誕生させないことを選んでよかったのかってな・・・」
「・・・前世での毛利さんの子どもで、工藤君の結婚相手の事ですか・・・」
「・・・軽蔑しても構わねぇぞ、明智。自分の考えの為に生まれるはずだった子どもを生まれさせない事を選んじまったんだからな、俺は」
「・・・軽蔑など出来るはずがありませんよ。そんな資格は私にも無いのですから」
「何・・・?」
そんな話題を自分の行動で断ち切った上で悔いを残していることを自虐的に語る小五郎だったが、物憂げに表情を変える明智の姿に意外といった声を漏らす。明智はそういった感情とは縁遠いタイプだと小五郎は思っていた為に。










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