イレギュラーによる解決と変遷

この学園祭の事とは灰原に接触する前に新一が元々通っていて今は立場上行けなくなっている帝丹高校で開催された学園祭の事で、そこでとある事件が起きたのだが・・・灰原が散々口酸っぱく言ったのにも関わらず、試作で作った解毒薬を飲んで元に戻った姿で新一は人前に堂々と現れて推理をし始めたのだ。

ピスコの件で新一からパイカルという酒を飲めば一時的に体を元に戻せると知った灰原はその成分を元に研究して作った試作の薬だが、元々のパイカルでもあくまで一時的にしか戻せなかった事にあくまで試作ということから薬を飲んでどれだけ体が維持出来るのか灰原にも分からなかった。だがそんな未完成の薬を使わねば『江戸川コナン』の正体が『工藤新一』と幼馴染みの蘭に露見してしまうかもしれない状況にあったから、賭けの要素も大きかったが薬を飲むかを持ちかけると新一はすぐに頷いた。

そして結果として試作の薬は効果を発揮して新一の体を一時的に元に戻した訳だが、その時に灰原は蘭にだけ会って誤魔化すだけ誤魔化したら何も起きない内にすぐに姿を消すようにと強く念を押した・・・だが事件が起きて状況が停滞していると見るや、新一は大勢の人の前に姿を見せて堂々と推理を始めてしまったのだ。

その後の経過についてはこの場では然程重要ではないので以降に色々あって新一の体がまた小さくなって蘭への誤魔化しも出来たのだが、灰原もその時は相当に肝を冷やしたものだった。そして蔵馬からすれば相当に愚かとしか言いようがない行動だと言えた。

その後の経過だけを見るなら確かに成功はしたとは言えるかもしれない。事件は解決出来た上で、蘭にコナン=新一ではないと印象付けられたことは・・・だがそれはあくまでも偶然の上、それも奇跡的なタイミングの良さによって成り立っただけだ。現に薬の効果が切れる時が少しでもずれていたなら新一=コナンだと蘭ばかりか大衆の前で晒すことになっただろうし、下手をすれば外部・・・それこそそんな有り得ない事が起きたことが話題として見られる形でマスコミの格好の餌とになり、組織の者達にも知られることになっていた可能性もあったのだ。ただでさえ学園祭に来ていた人々に学校の有名人であった新一が突然、それも姿を現したのだから箝口令を出しても話題にされておかしくないことも有り得たのにだ。

灰原はそういった蔵馬の言葉に改めて肝を冷やしたのだが、更なる言葉に都合のいい言葉しか聞かない犬と例えたことに納得した・・・「目標に一直線に危険を承知で脇目も振らないのは気まぐれで警戒心の高い猫とは似つかないが、だからと言ってそれに集中しすぎて餌をやるといった言葉にだけ都合よく反応して言うことを聞かせようとしても中々言うことを聞かない・・・野良犬として大して関わりなく相手をするくらいならまだいいだろうが、飼い主としてだったり面倒を見るようになどと言われたならこれほどに厄介な犬はいないよ」との言葉に。

その言葉で灰原は新一に対する印象が一気に変わったと蔵馬に言った。新一の事を時折暴走するけれど頼れる人物だと本人に言うつもりはなかったけれど思っていたことが、蔵馬の言葉で完全に能力はあっても自分のやりたいように行動する事が最優先事項に来るだけの人物にしか思えなくなったと。

そしてそういった言葉があったからこそ解毒薬の研究に関しては蔵馬のマンションでやると灰原は決めたのだ。新一に薬の情報が知れ渡ったならどうなるか、その想像が灰原にもはっきりと出来てしまった為に。









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