イレギュラーによる解決と変遷

・・・最初、灰原は素直に話を受け入れることが出来なかった。妖怪という存在もそうだが概念のみの存在と思われていたあの世と呼ばれる霊界という世界があり、そこの指示を受けて蔵馬が動いているということに。

しかし信じられないと思いはしたものの、灰原も口から出任せを言っている訳ではないと考えた。薬の存在と自分や新一がその薬を飲んだことを知っていて、ピスコがどういう風に行動をしてきた上で死んだかを現場にいたはずの自分しか知り得ないことも知らないことも正確に把握していることに加え、何より蔵馬の姿である・・・人間の姿の時も端正な男であるとお世辞抜きに考えていた灰原だったが、妖孤の状態の姿は正しく人あらざる者にしか出せない魔性の美貌に空気を携えている・・・目の前で劇的に変化されたこともあるが、灰原は次第に蔵馬の言葉を受け入れていった。

そうして灰原が完全とは言わないものの警戒心を解いたところで、妖弧の姿から戻った蔵馬は本題を切り出した。組織の壊滅をするに辺り、薬の解毒薬が作れる作れないのどちらかに限らず全て終わった際に薬のデータもそうだが灰原の記憶の中から作り方を消すつもりであると。

その蔵馬の言葉に灰原は霊界側の考えを聞いたのもあるが、あの薬の作り方が万が一にでも世間に広まるような事になればどうなるかの仮定の話を聞いてそれで構わないと告げた。自分としても二度と薬を作るつもりはないし、もしあの組織とは別の所から薬を作るようにと人質でも取られる形で無理矢理にでも作らされるようなことになるよりは、例え人質もろとも殺されるようなことになろうとも薬を作れば人質が助かってもどっちみち後悔する未来が目に見えていると感じたが為にだ。ならばいっそ薬はもう作れないといっそ逃げ道を断てば、まだそういった時の覚悟が出来ると。

そういった灰原の覚悟について聞いた蔵馬は、改めて解毒薬は作る気はあるのかに作れるのかというように聞いた。その問いに灰原は少し考えた後、「私だけならまだしも工藤君は戻ることを諦めてないことから組織を壊滅させて薬が作れないことを言っても意味はないだろうから、解毒薬は自分達の分は作らないと納得しないだろうから作る」・・・そう灰原は答えた。データがあるなら作ることは十分に可能だろうからと。

そう聞いた蔵馬は微笑を浮かべ、それなら暇な時があればここに来ればいいと灰原に告げた。阿笠博士の目があるところに、新一が何かを勘づくようなことがないようにここで作業をすればいいと。そんな蔵馬の言葉に最初は灰原は訝しげな反応だったが、続いた蔵馬の新一に対する考えを聞いていって次第に納得していった・・・


















「・・・多分ではなくまず間違いなく貴方の言ったよう、工藤君はこうしてここでデータを手に入れて解毒薬を作るために私が密かに動いていることを批難するでしょうね。何で自分や博士に貴方やそのデータの事を言わなかったのかって」
「だが彼の性格を考えれば、薬が出来るとなったなら一も二もなく真っ先に元の体に戻ることを選択することだろう。学園祭の時のようにね」
「でしょうね・・・例え止めても必要があったから姿を表すしかなかったと、後先考えることなく」
それで話題は新一についてになるのだが、二人ともにその言葉には辛辣な考えが宿っていた。特に灰原の言葉には強い実感がこもる形でだ。


















・・・蔵馬は灰原に対し、新一の事をこう例えた。身体能力に頭と言った能力は高いが、人の言葉は都合のいいことくらいしか聞かない犬だと。最初はどういうことかと思ったが学園祭の時の事を切り出され、あぁと灰原は納得した。あの時の事は現場にいたこともあるが、その後に起こった一連の流れもあった為に。









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