と言っても最初から二人きりで会うだとか信頼を勝ち得た状態で出会った訳ではなく、新一が灰原も含めた同級生達と行動をしている中でたまたまポアロから出てきて顔を合わせたと言ったように最初は接触しただけだ。その時にはポアロで新一と度々顔を合わせていて、互いに自己紹介をしていると言った関係だったために。

そういったことから軽く何分か軽く話した程度で、新一達の同級生の歩美という女の子が蔵馬の端正な顔立ちに見惚れて話をしてきたことくらいでファーストコンタクトは済ませておいた。(後、灰原も隠してはいたが蔵馬の顔を見た瞬間見惚れたように頬を赤くしていた)

その上でそれから度々蔵馬は偶然と言ったように新一や灰原達と出会い、ちょこちょこと会話をしたり軽食を子ども達にご馳走したり時には事件に巻き込まれたりなどして関係を作っていった・・・本来事件に関わるようなことは蔵馬はしたくはなかったが、やたらと事件に巻き込まれやすい新一の近くにいるとなると必然的に事件に出会う確率が高くなるために。

しかしその事件を介して何故米花町に来たのかを新一に聞こえるように説明出来たのは大きかった。コエンマの計らいにより表向きは『南野秀一』の所属する会社からの出向で、米花町近隣で子会社用のテナント探しの為にしばらく滞在するために来ていて、空いた時間はパソコンに送られたデータに色々と打ち込んだり会社と連絡を取り合うといった形で仕事をしているため、時間に余裕が出来るというか作りやすい立場にいるのだと。そしてそれは『南野秀一』の義理の父となった人物への電話と返ってきた肯定により、『南野秀一』がある程度自由に行動を出来る事の裏付けを新一に認識させることが出来た・・・コエンマ側の霊界による手回しで普通ならもう少し担当の人物を立てて日帰りでちゃんとした形でテナント探しだとかをするはずなのに、そんな有り得ない形を会社公認の物とした事で蔵馬当人には疑いを向けないようにすることでだ。

それでそういったキャラ付けをしたことからポアロにいてもいなくても、色んな場にいたとしてもある程度不自然ではない立場を新一達に認識させた上で交流していった蔵馬だが、笑顔を浮かべるその裏で大きく行動をしていた・・・

















「・・・でも改めて思うけれど、話に聞いた時に薬のデータを見せられた時は驚いたわ・・・どうしてそんなこと出来たのかって」
「まぁうぬぼれる訳じゃないが、俺だから出来たことだからね。他の人には到底出来ることじゃないさ」
「それはそうよ。話を聞いた時にはそんなこと出来るのって思ったもの」
灰原はそこから話題を薬のデータについてを気を引き締め直すように変え、蔵馬が自分だから手に入れることが出来たと返すその言葉に否定を返せなかった。




















・・・灰原と交流をしていく中で新一はともかくとして、蔵馬はこの娘の体をどうにか戻してあげたいと思うようになっていった。薬が出来なければ諦めの悪い新一にずっと付きまとわれるだろうことや、以降も平和に暮らしたいなら組織にいた頃の姿形に戻るのは些か危険になる可能性も無いことはないが、それでも彼女自身もどこか元の体に戻りたそうにしていると蔵馬は感じた上で組織と完全に縁切りをするには組織が潰れることもそうだが、それに伴い元の体に戻るということが精神的にも区切りが出来ていいだろうとの見込みからだ。

そう考えた蔵馬はまず薬のデータを手に入れることにした。コエンマからはシェリーが薬のデータを手に入れても元に戻れるかは不確定だと言われたが、なら実際に彼女が作れるならそれでいいと思ってだ。

そしてそうして蔵馬はコエンマから渡された資料を元に、組織のコンピューターから薬のデータを盗み出すことにした・・・ジンを使ってだ。









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