イレギュラーは起こりうる物

「・・・こちらとしては戻せるものなら戻してもらいたいという気持ちはあることはある。一応後始末の意味でもその薬は最初から存在しなかったというように見せるためにな・・・だがシェリーに任せる形で戻すならその分の時間が必要になる事から、それだけの時間がかかることもそうだが確実性がない・・・一応は手掛かりはあるそうだから出来ないことはないようだが、わしからは絶対に元通りになれる薬は出来るとは保証は出来んぞ」
「成程、確実性が無いということですか」
「ただこれは元に戻れんなら戻れんで済む話になるし、それはそれでお前に払う金がこちらが増えるだけだ。問題なのは・・・工藤新一をどう納得させるかだ」
「・・・そう言うほどに工藤新一は厄介だと言うのですか?」
「あぁ、厄介だ」
コエンマはそういった気持ちになる理由は確実性がないこともそうだが、工藤新一にあると蔵馬の確認に確かに頷く。
「工藤新一は組織を壊滅させて奴らを捕まえ、シェリーの作った薬で元に戻ることを望んでいる。しかしそれは自分の手で行いたいし、行ってこそと思っておる・・・他の誰かの手によって、それも誰かのお情けによって自分が元に戻される展開など求めてはおらん・・・ある意味ではそうして自分を強く持っていることは人としての強さがあるとは言えるが、正義感と復讐心に悪の組織を探偵として追っているという高揚感をごちゃ混ぜにしておることを全く自覚しておらんのだ」
「・・・それは確かに厄介ですね。そういった考えに気持ちがあって他人に決着を委ねたくなく、あくまで自分が主導して組織を潰したいということですか」
「そうなるだろう。それにお前が記憶を改竄させられるにしても、長い間記憶を弄るとなるとそれだけの手間がかかることもそうだが失敗の可能性が高くなるのではないか?」
「まぁそれは否定出来ませんね。そもそも記憶を改竄するにしても俺のやり方は記憶を覗いて都合のいい記憶を作れる物ではない上、組織関連で俺が関わる範囲が増えれば増えるほどに記憶の操作をする手間がやたらとかかることになりまからね」
コエンマはその工藤新一の厄介な部分についてを話していく中で蔵馬の記憶操作についてを聞くと、決して万能ではないと自覚があるからこそ平然と返す・・・記憶操作はあくまで植物を操れ記憶に介入出来る植物があるからこそ出来る産物であって、蔵馬自身は植物を介さねばそのようなことは出来ない。故に対象が多ければ多いほど、蔵馬からすればそんなポンポンと出来る事ではないから手間もかかる上に、記憶の齟齬が出ないように記憶を作り替えるのはかなり手間であるのだ。
「・・・そう考えれば確実に元に戻る保証のない二人に薬を飲んだか飲まされた者達を放っておくのを選ぶのもやむ無しだと、貴方は考えているのですね。色々と気を揉んだのに更なる問題がまた出てきて面倒になるよりはと」
「あぁ、そういうことだ。それに記憶の操作をしたとしても、以降に『南野秀一』としてのお前を疑い工藤新一が調べに来ることも有り得ん訳ではない。自分と周りの記憶の違和と齟齬から、『南野秀一』が何かをしたのではないか・・・そういった推理をしてな」
「・・・探偵を称している事に数々の事件を解決してきたその実力から、こちらに目を向けるということか・・・」
そういった部分もあって戻さなくてもいいのでは・・・そう聞く蔵馬にコエンマは更に工藤新一の追及があることを示唆し、蔵馬はタメ息を吐きたそうな表情を浮かべる・・・コエンマの言う通りの能力があるなら、工藤新一が『南野秀一』としての自分に近付いてきかねないという面倒な可能性があるということに。









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