イレギュラーは起こりうる物

「・・・三人の協力が得られないと言うより望ましくないのはよく分かりました。そして薬のデータと作成者のシェリーという人物の記憶のみを消すことも含めるなら、俺が適任だということも・・・ただその薬のデータの抹消もそうですが、組織の壊滅などそうそう簡単に出来るのですか?」
「そこについてはお前の判断に任せることになるが、その組織は日本だけでなく国際的に見ても様々に暗躍しておる。その点から日本の警察の公安だけでなく、FBIにCIAといった所も組織の壊滅を目指している・・・その為薬のデータの消去をしたなら、組織の長と忠誠の面から残してはならんコードネーム持ちを捕らえることが出来れば各勢力から入り込んだスパイ達が組織の壊滅の為に動くだろう」
「成程。組織を壊滅するようにとは言ったが、ある程度お膳立てをすれば勝手に各陣営が組織を解体してくれるというわけか」
「あぁ。だがそういった面々が壊滅を狙っていてもそれを簡単に許さないだけの狡猾さを組織の者達は備えておる・・・だから薬の記録の一切を消してそういった奴らの無力化とどこの勢力でもいいから引き渡しをすればそれで依頼は完了というわけだ」
そうして蔵馬は三人について納得しつつ組織の壊滅について簡単なことかと疑問の声を向けるが、全てを全てやらなくていいとコエンマは説明する。ある程度のお膳立てまですればいいと。
「しかし話を聞く限りだと、俺はその組織壊滅の為に大分時間を割かなくてはならなくなるが・・・」
「その点に関してはわしらが手を回し、『南野秀一』はしばらく出張というように見せ掛けるようにしておく。それと同時に今回の依頼は数年前と違って無罪放免を報酬にするのではなく、組織壊滅にまでかかった費用と今お前が働いている会社の給料分にプラスした上で更に多額の金を振り込むようにする」
「・・・随分とまた現実的な報酬ですね」
「『蔵馬』としてのお前にやれる報酬はもうないから、『南野秀一』としての立場で役立てるものが何かと考えた結果だ。それに『南野秀一』として動くからには色々と入り用だろうし、人間の立場としては金はあっても困らんだろう?」
「・・・まぁそうですね。ただ欲を言うなら税金や余計な手続きをしなくてもいいお金がいいですね」
「ちゃっかりしとるのう・・・分かった、お前が引き受けてくれるならその辺りの誤魔化しを含めて行ってやろう」
「すみません、手間をかけて」
ただその話の中身に時間がかかることを懸念した蔵馬だったが、コエンマが手回しに加えて報酬の金についてを口にすると微笑を浮かべながらさらっと面倒な要求をし、呆れたような顔にコエンマはなるがふと表情を引き締める。
「・・・今自然に流そうとしてしまったが、この件に関して引き受けてくれるのか?」
「えぇ。世話になっているのもありますし、状態を整えてくれた上で報酬をもらえるのなら引き受けますよ・・・ただもう少し聞きたいことがあります」
「ん?なんだ?」
「・・・その薬のデータの消去とシェリーの記憶の忘却を頼まれましたが、分かっているだけでも工藤新一とそのシェリー・・・この二人の体を元に戻すように動いた方がいいんですか?」
「・・・あぁ、それか・・・」
コエンマが気付いたのはナチュラルに蔵馬が引き受けてくれるとの言葉で確認を向けると、了承と口にされた二人の体の事について何とも言いがたそうな表情を浮かべる。









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