イレギュラーは起こりうる物

「・・・貴方の頼みですからやると頷きたいところですが、何個か聞きたい事があります。まずはそれを聞かせてからにしてもらえますか?」
「・・・何を聞きたいんだ?」
対して蔵馬はまだ話を聞きたいと言い出し、コエンマは何かと先を促す。
「まず霊能力者に妖怪が関わっていないと言いましたが、それは本当なんですか?俺の時とは違うとは言え薬の効能を考えるとそれらが関わらないのは考えにくい上に、B.B.Cの連中のような者達と関わってないことが不自然に思うのですが・・・」
「あぁ、その事か・・・それに関しては組織の長がB.B.Cのように妖怪と関わることを拒否したことからだ。この辺りは長の美学か何かは知らぬが、妖怪と関わらないようにして裏社会に存在する者も他にいないわけではないから全く不思議ではない」
「そうですか・・・今までが普通に妖怪や霊界関係ばかりだったから、つい裏社会の人間はそちらの手を利用する輩がいるのが普通だと思っていたがそうではない人物もいるのだな」
「B.B.Cの連中は莫大な金の力を用いて妖怪と契約をしていたが、そもそも妖怪を信用するかという者がいるのが普通で当然の反応だ。だからこそその長の意向もあるが、その組織は妖怪とは無縁の裏社会で幅をきかせている。妖怪と関わるか関わらないかの住み分けのされた、関わらない方の裏社会においてな」
「成程・・・」
そこで蔵馬から出てきたB.B.C・・・妖怪と関わり裏社会に幅をきかせる者達との関わりがないことを本当かと疑うが、コエンマからの返しに納得する。裏社会の人間でも妖怪を信用しないということもあるのだと。
「・・・それでは次ですが、何故他の三人の手はなく俺一人なんですか?」
「その事に関してはまず今の飛影に関しては人を無闇に殺すとは思えんが、妖怪の関わらんこの件において必要以上の血を流すことは望まれんからだ。特にわしやぼたんなどはまだしも他の霊界関係者からすれば、お前はまだしも飛影の方は性格的に何かしでかしかねんと見る者もいるのでな」
「成程・・・飛影の性格を考えるなら、確かにこの件でフラストレーションを溜めそうですね」
それで次の質問として自分一人である理由は何故かと聞くと、飛影の理由を聞いて蔵馬は納得した。確かにかなり制限の多い今回の件において、飛影に任せるのは色々と難はあると。
「うむ。そして幽助と桑原に関してだが、これは人間としての立場がある二人の事をおもんばかってだ・・・何しろその組織は表の社会にも根を張り規模もそれなりに大きく、組織と敵対した者に対して容赦がない。もし何らかのヘマから奴らに顔がバレて敵対することになって幽助や桑原当人達なら対処は出来ても、その周囲の家族達にまで手が伸びれば・・・桑原もそうだが、何より幽助の怒りが向けられた場合に目も当てられん事態になるのは想像出来る」
「・・・確かに今の幽助を怒らせるような事になれば街一つ程度更地にするくらいは余裕でしょうが、そうさせたくないから『南野秀一』としての顔と『蔵馬』としての顔がある俺一人でやってほしい・・・ということか」
「そういうことだ」
その上で残り二人についての理由を話すコエンマの言葉で蔵馬はその危険性を察する一方で、自分一人でと白羽の矢が立った理由に辿り着いた。そういうことかと。






・・・蔵馬は自身も含めて前の自分達と比べれば、段違いに自分達の力が上がっていることは理解している。特に幽助などは妖怪となってからはその実力は人間だった頃とは比べ物にならないほどにレベルアップしていた。それこそエアーズロック級の岩場で戦ったなら、数秒もあれば粉々に岩場が崩れ去るレベルにだ。

そんな幽助だが妖怪となってから考え方が妖怪寄りになったものの、大切なものというものに対しての姿勢はそこまで大きく変わってはいない・・・が、そんな幽助がもし家族や親しい人物を悪意を持って殺されたとした上で怒りに任せてその力を全開にしたならどうなるか・・・それこそ蔵馬の言ったよう、街一つ程度は軽く更地にするくらいは容易であり止めることの出来る存在などそうそういないだろう。

そう考えれば色々と迂闊な部分があって失敗しかねず、身内を攻撃されたなら怒り狂いかねない幽助と桑原を外すのは正しいと蔵馬は感じていた。そして『南野秀一』としての人間の顔を持ち、『蔵馬』という妖怪の二つの顔を持ち使い分けることの出来る自分ならこの件で『南野秀一』の周辺に目を向けさせずに動くことが出来るとも。









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