イレギュラーは起こりうる物

・・・妖狐、蔵馬。かつて魔界にて盗賊として名を馳せ、現在は黄泉というかつての配下だった男のNo.2という配下の地位にいる存在である。

その蔵馬は今までに様々な経験をしてきたが、今度もまた新たな経験をすることになる・・・


















「・・・わざわざどうしたんですか、コエンマ?こんな風に俺の所に来るなんて」
「・・・お前に頼みたいことがある。これは幽助や桑原、ましてや飛影には無理な事だ」
「・・・俺にだけ、ですか・・・」
・・・とある店の個室の中。蔵馬は久しぶりに会うコエンマ(ちゃんとおしゃぶりは付けている)に用向きについてを問うと、真剣に蔵馬でなければならない頼みがあるとの答えにそっと目を細める。
「・・・まず先にお前に何をしてほしいのかと言えば、とある組織の壊滅及びその組織が作ったある薬のデータ及び作り方の完全消去だ」
「組織の壊滅?それに薬?・・・前者ならまだ霊界や魔界の何らかの組織が面倒事を起こしたと見れるが、薬となると魔界か?」
「いや、霊界でも魔界でもない・・・れっきとした人間が作った薬だ。正真正銘霊能力者に妖怪といった存在が一切関与していない組織のある人物が作った、な」
「・・・そんな人間が作った薬程度に貴方が直々に俺の元に来るとは、それだけその薬が霊界から見てあってはならないものだということですか?基本的に魔界や霊界関係でなければ人間界への干渉をしない霊界からして」
「・・・あぁ、そうだ」
コエンマはまずとやってほしいことの中身についてを告げるが、その中身に蔵馬が確認を取ると重々しく頷く・・・妖怪や魔界などの普通の人間には対処の出来ないトラブルには動く霊界だが、基本的に普通の人間だけで起こすトラブルには例え戦争規模の事があっても関与することはしないのが基本的なルールになっている。だがそれを踏まえてまでも蔵馬にコエンマは頼みごとをしているのだ・・・事態の解決を人間の体を持っているとはいえ、妖怪の蔵馬に直に解決を依頼するようにだ。
「・・・どういう薬なんですか、それは?」
「・・・薬の作製者が意図的に作った物ではない上に未完成品だということを加味して言うと、体を七歳前後にまで若返らせる薬だ」
「なっ・・・そんなものを、人間が・・・!?」
蔵馬はならその薬は何なのかと聞くが、返ってきた返答に思わず目を見開いた。






・・・蔵馬自身肉体を退行させるとある実の存在を知ってはいるし体感もしたが、それはあくまで人間界にはない魔界の植物の産物でありまともに使えば生まれる前にまで肉体を退行させられる効果を持つ身だ。

そんな実があることは知ってはいるが、それでも魔界という地にある実ならそういう効果があってもおかしくはないと、別段に蔵馬は不思議には思わなかった。蔵馬自身妖怪という身の上もあるから、そういった不思議な効果をもたらす物も魔界なら有り得てもおかしくないと。

だがそんな魔界なら有り得ても、人間界の普通では有り得ない薬の効果を聞いて蔵馬は驚いたのだ・・・まさかそんなものが偶然とは言え、人の手により作られたことに。






「・・・やはりお前も驚くか・・・と言ってもわしや霊界の者達もその薬や組織の存在の事を知ってそれこそ相当に驚いたぞ・・・」
「・・・一体どこからその情報を仕入れたのですか?魔界や霊界が関わっていないなら、それを知るきっかけはかなり限られてくると思いますが・・・」
「それはとある死者から発覚したんじゃ・・・その組織の人間の死者からな」
コエンマがリアクションに妥当だと言い蔵馬はどういう経緯で知ったのかと聞くと、組織の死者からだと返した。









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