いつかを変えることの代償 中編

「工藤君に良識や善意がないとは言わないどころか、普通の人と比べても十分にあることはあるでしょう。ですが今言ったように工藤君の注目度からマスコミに嗅ぎ付けられた際に黙りきることが出来るか分かりませんが、毛利さんはどう見ますか?」
「・・・正直、微妙な気がするな・・・確かに明智が言うように良識や善意ってヤツは新一にはあるが、例の組織に関わるまでにコナンから戻ってからのあいつの活動を見てるとどうにも嘘をうまくつき続けられるとは思えねぇんだよな・・・」
それで明智が新一の取るだろう行動についての予測を聞くと、小五郎は極めて複雑そうに分からないと漏らす。






・・・小五郎が何も新一が言わないと断言出来ない理由の訳として、明智が危惧するようマスコミへの露出を躊躇わない事にあるのもあるが、真実を知っていてそれを黙っていられるのかという事にある。

新一の良識に善意を疑いたくはないし、現に事件の全容についてを黙ることもコナン時代の事件で出来ることは出来ると小五郎は見ている。だが新一がマスコミからの追及をうまくかわすことだったり、うまい嘘がつけるかと言うと小五郎は出来るかどうかは難しいと見ていた。

まぁ新一の体が縮んでコナンとなったことに関してはまだ常識の範疇外の事であることや、幼い姿の子どもを昔に見たというだけで新一とコナンを=で結びつける事など出来るはずも無いだろう。これに関しては小五郎を責められる筈もない。

・・・だがコナンであることに関してはともかくとしても、新一が人に嘘をうまくつけるとは小五郎にはあまり思えなかった。その訳とは・・・






「その訳は元々あいつは隠し事っていうか、嘘をつくことが苦手なんだよ・・・自分が知りたいことにやりたいことだとかをやろうとして誰かを巻き込まないようにだとか遠ざけようって時、大抵分かりやすくなっちまう・・・この辺りは有希子ちゃんの血を引かなかったって言うか、謎を解く立場として逆に謎を隠そうとすることに対する拒否の気持ちがあってなのかは知らねぇが、とにかくあんまりそっちの方は上手くはなかったな・・・」
「そうですか・・・」
小五郎はそのまま昔の事を思い返しながら新一についてを話をしていき、明智は余計な言葉は挟まずに納得する。






・・・そう、新一にはあまり人を騙す才能という物を感じられなかったことにあるからである。理由がどちらにあるかにせよだ。

この辺りは小五郎が思い返す限りで服部平次という新一と同じ高校生探偵として名を馳せた人物がいるのだが、コナン時代に新一に会いに来たと初めてのコンタクトをしてきた時にはあっさり近くに新一がいるとまで辿り着き、次の顔合わせの時には事実を知る機会があったこともあって工藤新一だとバレたと聞いた。

この話を思い出話として新一から聞いた際、流石に新一が迂闊だと小五郎も思った。いかに事件の真相を解決したいためとは言え、あまりにも自分が自分がという気持ちで行動を起こしすぎじゃないかと。そして最初の時の最後辺りでは謎を解く側からしての視点でこういったやり方は不備を招くと考えなかった事も結構な迂闊だったと小五郎は思っている、その後の自身のフォローにケアを入れたと言って無事に済んだというのを差し引いてもだ。

この辺りはそれこそコナンの体であったからある程度は誤魔化せた部分も大きく、何度もそこでどうにかなったことがあるが後で話を聞けば聞くほど・・・そして蘭との結婚が上手くいかなかった事はこの新一の迂闊さにも理由があると、小五郎は考えるようになった。真実を包み隠さずにいられない・・・いや、包み隠せない気性を持つ新一の迂闊さが。









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