いつかを変えることの代償 前編

「・・・ん~、朝か・・・」
・・・寝室のベッドにて、起き上がるチョビ髭の中年男性。枕元の時計を手に取り、ガリガリと眠そうにしながら頭をかく。
「今日は依頼も仕事も特に入っちゃいねぇから、依頼人が来ないなら部屋に事務所の掃除・・・まぁ買い物は事務所を閉めてからでいいが、取りあえずは朝飯を食いに行くか・・・昨日でほとんどの食材が無くなっちまったからな・・・くぁぁ・・・」
そのままの体勢で今日の予定に行動を口にしていき、欠伸をしながらベッドから出て洗面台の方に向かっていく。









・・・今ベッドから起き上がった男の名前は毛利小五郎で、職業は探偵で独身の身の上である。それだけ聞くなら探偵という職業を除けばどこにでもいそうな男なのだが、小五郎にはそんじょそこらの人間にはない秘密がある・・・それは未来から戻ってきて、二度目の人生を歩んでいるという秘密だ。

この事について小五郎は何故このような事になったのか、未だに謎であると思っている。しかし起きてしまったことは仕方がないと小五郎は元々の楽観的な物の考え方に加え、相反するような事を言うようだがちゃんと物事を考えた上でその事実を受け入れたのだ。そして小五郎が何を考えたのかと言うと・・・









「はじめちゃ~ん、早くしないと遅れるわよ~!」
「待ってくれよ美雪~!」
「・・・幼馴染み、か・・・俺達にも、そして蘭や新一達にもあんな時期があったな・・・せめて今の二人には、俺達や蘭達のような事にはならないでほしいがな・・・」
・・・食事を取るために住宅兼事務所を出て店に向かう小五郎。その道中で不動中学の男女の生徒が仲良く登校していく姿に、小五郎は気持ちが落ち込むのを自覚しながらも切に願うような声を二人の後ろ姿に向ける。









・・・小五郎は二度目の人生において結婚はしていないが、何故結婚していないのか?それは以前のようにしない方がいいという考えと共に、そうしたくないという考えがあるからだ。

・・・以前の小五郎は幼馴染みと言った存在の妃英理という女性と結婚をして、蘭という女の子を授かった。そこまでは良かったが、英理から弁護士になりたいという話を受けてから両者の意見は対立して離婚にまでは至らなかった物の、別居をした上で蘭を自分が育てるという離婚にいつなってもおかしくない状態になった。

ただ小五郎自身そういった事態に関してはまだ他の家庭でも起こりうる事と、探偵業をこなしていたことに加えて英理に対する気持ちに蘭に対する愛情が残っていたからその状況に甘んじる事が出来た・・・だがその状況を良くも悪くも大いに動かし、そして最終的にぶち壊した一因となったのが蘭の幼馴染みでその蘭と結婚した新一である。

・・・詳細は一から語れば酷く長くなるので省略するが、新一はとある事件に巻き込まれ小五郎達を後々にその事件に大いに巻き込んだ。そしてその事件を起こした大本を叩き潰す際には、状況もあって小五郎も協力出来ることは協力はした。そしてその大本を叩き潰した後で新一と蘭は晴れて恋人同士になり、数年後には結婚することとなったのだが・・・その時に小五郎は相当に大きな負担を背負っていた。その負担とは何かと言えば、新一が自分の為にと小五郎を使って探偵の仕事の幅を広げていったことだ。

これに関しては普通に考えればまず信じがたい事だが、新一はその事件によって高校生から小学生レベルの体へと意図せず戻された。そこで新一は知り合いの助言と助けにより探偵である小五郎の立場を利用し、大本に近付くためにと小五郎の家に居候して事件がある度に小五郎を道具を使って眠らせて小五郎に成り済まし、事件を解決してきたことで小五郎を名探偵へと仕立てあげていった。

・・・その行為に対して、名探偵と扱われたからこその恩恵を少なからず受けていた事自体は小五郎はむしろ感謝している。なら何が問題だったのかと小五郎が考えているのかと言えば、名探偵に仕立てあげた後のアフターケアが無かった事だ。










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