自分の当たり前が人の当たり前には確実には当たらない

では何が異質かと言えばだが、まずは江戸川コナンがあっさりと毛利家への居候を決めたことだ。経緯を簡単にまとめるなら新一と連絡を取れない事を心配に思った蘭が工藤邸に行くと、そこにいた江戸川コナンと隣に住む阿笠博士に会ってコナンを預かってくれと言われたことからあっさりとそれが決まったことだ。

この事に関しては江戸川コナンが阿笠博士の元にいたのはまだいいだろう。工藤家の親戚でいて前にも会ったことがあり、人柄を知っていることから子どもをしばらく預かるというようになったことは。しかしやむを得ずに預けなければならなかったとはいえ子どもを信頼出来る人物に預けたというのに、自分の都合で子どもをまた別の他人に預けるというその行動がどれだけ無責任な事かを理解していない。

ただそこで更に言うならそんな子どもをあっさりと預かると了承した蘭もそうだが、それをあっさりと受け入れたコナンもコナンだ。犬猫を預かるような気安さで見も知らぬ子ども一人を自分が受け入れるなどと責任のある者の取る行動とは言えないし、いくら人が良さそうと見たからとは言え親の許可もない人物の元にホイホイとたらい回しのような形で行くなどいくら頭がいいとは言え小さな子どもの考えで有り得る事とは思えない。

ならその子どもに似つかわしくない頭の出来の良さも含めて家庭に何か事情があるのかと、事件現場で出くわした阿笠博士にコナンについてこう聞いてみた。「コナン君のあの聞き分けに頭の良さは、親戚や知り合いを親からたらい回しにされて来たからなんですか?」と。

その言葉に阿笠博士は驚愕したが、半兵衛は小五郎達から同居する経緯を聞いてあまりにもコナン君の聞き分けの良さからよくあるテレビや物語にあるような問題のある家庭環境で育ち、たらい回しにされてきたから両親を反面教師にして育ってきたんじゃないかと答えると慌ててそんなことはないとしどろもどろに・・・しかし何かを隠し、取り繕うようにして返した(ちなみにその話を後に聞いた新一は盛大に顔をしかめた。いくら事情があって身を偽らなければならないとは言え、まさかそんな可哀想な子なんじゃないかみたいな予想を立てられると思っていなかった為に)。

・・・そんな阿笠博士の様子から江戸川コナンにはまだ何かあると考えたのだが、それとは別に集めた情報の中で更に異質な物があった。それは前に来たというコナンの母親から渡された養育費だとのお金の一千万の大金である。

この現代において一千万という金額は一般的なサラリーマンが年収として得られる金額が五百万だとするなら、二年働かなければそれだけの金額は得られない大金だ。しかしこの現代社会で生きていく上で全くお金を使わずに貯めて生きていくことなどそうそう出来るはずもなく、ギャンブルや株などに手を出さないなら貯金をして一千万を貯めるには何年もかけるだけの苦労が必要になる。

しかし以前に現れたという江戸川コナンの母親は嫌な顔一つすることなく、笑顔でポンと一千万分の入金がされた通帳を手渡してきたと小五郎は答えた。

この事を小五郎は大金を得た喜びから一切コナンやその親に対する疑問を持たなかったようだが、事前に江戸川コナンとその両親の戸籍がないことを知っていた半兵衛はその親も怪しいと感じていた。それだけの大金を身分も不確かな人間がどうやって捻出出来るのかと。

その上で一応小五郎と阿笠博士にはコナンの親の連絡先は知っているのかと聞いた時に小五郎は知らないと言われたが、阿笠博士は先程のたらい回しの発言の後もあったからだろうが焦ったよう苦笑いをしながら何かあればわしから連絡しますのでと濁される形になった。

この事から阿笠博士も江戸川コナンと親について何らかの関係はしているとは見ているが、問題はそこではなくそんな両親も含めた江戸川コナンという存在が何者であるかということだ。子どもの為とは言え一千万という大金を用意する親を持ち、事件となれば影に隠れる形で毛利小五郎や居合わせた人物を推理役に立たせて事件を解決する頭を持つ小学生であり、親共々戸籍を持ち合わせていない・・・そんな奇妙極まりなく、その上で怪しさが溢れ滲み出る者達は何者かと。









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