自分の当たり前が人の当たり前には確実には当たらない

「お、親にって・・・」
「コナン君の両親がどんな人物かは知りませんが、あくまで毛利さんはコナン君を預かっているだけの身です。保護者と言えば保護者ではあるのでしょうが、だからと言って毛利さんがコナン君の本当の親という訳ではありません。ですのでもし何かあれば毛利さんがその責任を全て負うのではなく、コナン君の親に言うのが筋だと思ったんですが・・・俺の言っていることは間違っていますか?」
「それは、間違ってないとは思いますが・・・」
「勿論こちらとしても子どものやることに一々目くじらを立てるような大人気ない事はしたくないししないようにしたいとは思いますが、これからは度が過ぎるようなことがあればそうするということは了承をお願いします。今まで毛利さんはコナン君を預かって仮とはいえ保護者の役割を果たしてきたのでしょうしコナン君も今の話で理解してくれたと思いますが、流石にここでの話を聞いても尚問題行動を取るとなれば本当の保護者にも注意をしなければならなくなる事は」
「・・・まぁそれは仕方無いですな・・・あくまで私はコナンを預かってるだけの身ですからね・・・」
小五郎はその発言はどういうことかと動揺しながら聞くが、コナンの両親にも話すべきだと理詰めで返していく半兵衛に確かにと言ったように頷く。本当の親にも言うべきことは言うべきであると。
(・・・まずい、すげぇまずいぞ・・・今までの竹中警視の感じだと俺が何かやったって知られたら速攻で連絡が行くだろうし、おっちゃんや蘭も今の話だと俺の事をすげぇ監視をしてくるのは目に見えてる・・・そしてもし事件現場で俺が動いてることが問題視されて、親に連絡なんて事になったら・・・!)
そしてそう言われている当人である新一は自分からしてのこの事態のあまりのまずさに戦慄していた。決して受け入れたくない事ではあるが、この状態を受け入れざるを得ない事に。






・・・新一は今の自分が子どもの体であること自体は今は受け入れてはいるが、精神までは退行していないという自負は強い。だからこそ自分が出来ることである事件の解決はやりたいと思っている上で、目的に辿り着くまではそれを続けねばならないと強く思っている。

しかし今回の半兵衛から下された処置はそんなコナンとして、小五郎や他の人物を隠れ蓑に動いてきた新一の行動をほぼ無力化してしまえる代物と言えた。特にコナンの両親への連絡というものはそんなもの存在しない新一からすれば、絶対に避けねばならぬ事態であった。

協力者である有希子に頼めばもしもの時は一時的に誤魔化しはきくかもしれないが、それも半兵衛をどれだけ誤魔化せるか保証が出来ない上に小五郎達の監視の目が厳しくなれば事件に関わるのが非常に難しくなる。そうなれば今までの子どもらしく謝れば小五郎のゲンコツくらいで済まされた行動が、半兵衛の存在もあってどうなるか予想がつきにくくなるが・・・新一が考えつく中で最悪な展開はコナンとしての両親を呼び出すと言われることもだが、江戸川家に戻るようにと達しを下される事だ。

あくまで毛利家側はコナンを預かっているだけの身であり、親として責任を果たす身にはない。となれば責任を果たすのは存在しない江戸川家になるが、電話だけならまだしも直接会うとなれば有希子だけでなく優作ではないにしてももう一人助けが必要になるが・・・それで半兵衛が反省したならそれでいいと一回は仮に納得したとしても、以降もそれを繰り返して許してくれるとは新一には思えなかった。

精々親の呼び出しで許してもらえるのは良くて三度がいいところだというのもそうだが、その時には小五郎もいかに蘭が庇いだてしても半兵衛の言う方に寄るだろうとは新一は見ていた。そうなればいかに江戸川家の両親に扮した有希子が頑張ろうと、事件に関わりやすい立場にいる毛利家に居続ける事は望まれないと半兵衛に小五郎・・・まだ小五郎は良いかもしれないが、半兵衛から理詰めで返されればどうにもならなくなる可能性が高いと新一は感じていた。例え優作が頑張ったとしても、非があるのは新一のほうであり半兵衛が立場としては優勢にあるからこそどうにもならないだろうとも。

・・・あくまでもこれは最悪の可能性の一つと新一は考えたが、半兵衛なら自分が行動を起こした場合のペナルティを予測もしない形で出してくるかもしれない・・・そう考えると新一は恐ろしくなっていた。下手に行動した場合の半兵衛の返しがどのような物になるか分からない事が。









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