いつかを変えることの代償 中編

「まぁ私の事はともかくとして、金田一君に関してはその事件だけでなく同じような形で警察に追われることはまた別にありました」
「は?なんでそんなことに・・・」
「その事についてはまた別の機会にお話しますが・・・今言った事件に関しては表向き指名手配されていた金田一君が犯人ではないと証明され、その後出版された本が社会現象になるほど爆発的に売れることになりましたが・・・おそらく工藤君がこの事件と対峙するか、もしくは金田一君の立場に立ったとしていたなら事が大事になってしまった可能性が高いでしょう・・・高校生探偵として名高い工藤君が連続殺人を犯したなどマスコミが放っておくはずがありませんし、事件の真相に関して黙秘を貫けるかどうかと言われると私はあまり信用出来るとは思えません」
「・・・どういうことだ?事件の真相が何か言っちゃまずいことでもあったのか?」
「それについてはその本の中に全員実名で公開されると言われていた本の中、唯一イニシャルで呼ばれていた人物がいる・・・という話をお聞きしたことはありませんか?」
「・・・あ~、何か朧気程度に覚えてんな・・・このTって人物は誰なんだって出版社に日々電話が鳴り響いて、結局本の影響が収束するまで誰なのか言われてたの・・・」
明智はそこから更に事件の詳細についてを深く話をしていくのだが、本の中身の人物の話についてを聞かれて小五郎は当時の記憶を精一杯思い出しつつ漏らす。






・・・実の所、橘の本が話題になったのは作家が実名公開と謳っていた本なのに一人だけイニシャル扱いで決して誰の事なのかを出版社に事件の関係者が明かさなかったからだ。その事にイニシャルTは誰なのかとも話題になって、一層本が売れたのである。






「・・・その真実に関しては今はまだ事件が起こっていないことも併せて決して口外しないようにお願いしますが、橘の殺害から始まる事件の真犯人とその動機は・・・そのTという人物で、臓器密輸をしていた理由はTの娘に合う臓器移植をせねば十にも満たない娘が死んでしまう・・・という理由からです。そしてそのTという人物は事件の詳細についてを語った後に自傷をした上で、以前娘に臓器を提供して手術に失敗した事から残り一つとなった臓器を最後に娘に移植してほしいと遺して逝きました」
「なっ・・・!?」
だがここで事件の真相を重く口にした明智に小五郎は絶句した・・・まさか事件の真相がそういったあまりにも凄惨でいて、重いものであるとは思っていなかったために。
「その手術の結果として娘の命は助かりましたが・・・この件が表沙汰になればどのような騒ぎになるかもそうですが、Tの娘が世間やマスコミからどういう風に言われるか・・・想像はつきますか?」
「・・・・・・同情とかが来るぐらいならまだいいかもしれねぇが、こういう時に娘を叩くやつは必ず出てくる。犯罪者に人殺しの娘だって心がない言葉をその娘本人に聞こえようとそうでなかろうとな・・・」
「えぇ。それに今言いましたがその娘は十にも満たない子どもで、親が自分の為に犯罪を犯した上で死んだだけでなく自分の体で今脈打つ臓器が自分の為に死んで差し出された物だと知ったら・・・」
「・・・つれぇ話だよな・・・自分の為に犯罪を犯したばかりか、自分を生かすために臓器を提供されて死んで・・・」
「えぇ。ですからその娘には大きくなるまでは事実を知らせることなく、金田一君を本の出版権を手に入れるために誘った人物が元々のTの知り合いでもあったために彼女を引き取ったんですが・・・金田一君がマスコミに顔が売れているような人物では無いことに当人がその気が無かったことが、その娘の事実を明らかにさせないようにするには都合が良かったんです」
「・・・けどこれが新一だったなら違ったかもしれない、そうお前は見ているんだな?」
「えぇ、実際に会ったこともない彼には失礼だと承知で申し上げるならです」
その上でTとその娘についてを話していく明智に小五郎は一度は子どもを持った親として重い気持ちを抱くが、そこで話題が新一の方に向かったことで気を取り直して真剣に先を促す。









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