自分の当たり前が人の当たり前には確実には当たらない

「・・・ま、それはいいや。それで目暮警部。俺がここに来たわけだけど、簡単に言うならしばらく目暮警部達の現場の観察するためだよ」
「か、観察?い、一体何で・・・」
「そこのとこは色々理由はあるけど、仕事上の事だからちょっと話せないんだ。だから取り敢えずしばらくは事件が起きたら俺も一緒に現場入りするけど、俺が何か口出ししたりはしないからいつも通りに仕事してくれればいいよ」
「は、はぁ・・・分かりました・・・」
そんな中で本題だと思い出したように目暮に向かいしばらくの同行と観察が目的だと気楽そうに言う半兵衛に、目暮は曖昧そうに頷くしか出来なかった。一応年は目暮の方が上ではあるが、警視という立場にある半兵衛の言葉には理不尽さが無いこともあって逆らえない為に。
「え~、理由って何なの~?教えてよお兄さ~ん」
「だ~め。お仕事だから誰にも言っちゃいけないんだ~、これは」
「え~、ケチ~(・・・一体警視レベルの人間が何を観察しに来るって言うんだよ?何の目的があるんだ、マジで・・・?)」
そんな半兵衛を見上げコテンと首を傾げながら可愛らしい子どもらしく聞く新一だが半兵衛が緩くも話す気はないとキッパリ返したことに、ぶりっ子を続けつつ理由を考える。警視と言うランクの人間が何を観察に来たのかに、その対象は何なのかと・・・


















・・・ただそんな風に半兵衛の行動に疑問を抱きはしたものの、半兵衛は本当にそれ以降は目暮達に口出しをするようなこともなく腕組みをしながら現場の様子を確認しているだけだった為、新一は事件を解決する方に意識を集中して動き出した。色々と手がかりを探しつつ、謎を解くために。

それで事件の謎が解けたと考えた後、いつものように新一は共に来ていた蘭の親である小五郎に麻酔銃を撃ち込んだ上で物陰に隠れ変声機で小五郎の声色に調節して小五郎のフリをし、真相を解決した。

そして全てが終わった後に半兵衛の事が気になった新一だが、別段何も変わった様子も見せずに目暮達の近くにいただけで新一は何を目的としてここに来ているのかと本気で疑問に思ってしまった。

だがそれでまた質問をしても茶目っ気を滲ませて教えられないと返す姿に、新一はじれったさと共にやりにくさを感じていた。半兵衛の取っ付きやすそうな態度の反面、その実はちゃんと秘密を守らんとするその姿勢に。






・・・ただそんな半兵衛とも事件を解決したからこれでもう会うこともないだろうと考えていた新一だったが、以降に自身が出会った事件で通報した時には多少の時間の前後があったりはするものの、目暮達と共に現場入りをしてきた。

この事に本当にどういうことかと思った新一だが半兵衛に何度も聞いても同じようにはぐらかされて目的は何かを聞けずじまいだったが、次第に新一は気にする方が馬鹿らしいと言った考えになっていった。警視という身分であるのに現場に来ても本当に最初に言ったように何もせず、事件の解決に貢献するような事も本当にしなかった為に。

そして気にしたら馬鹿らしいと思った決定的な理由は、一度無邪気な子どもを装ってこう聞いたからである。「お兄さんは何もしないでここにいて大丈夫なの?」と。そんな子どもからの計算のない(と思わせるような)純粋な声に、「俺はここにいることが仕事だから大丈夫だよ~」と平然と笑顔で半兵衛が返したからだ。

新一からすればこの反応はかなり意外であったと共に、半兵衛の事を言葉にせずとも見下す切っ掛けとなった。警視という立場にあるのに事件に対して向かい合う姿勢など見せず、真剣な様子など浮かべないその態度に。

故に新一は現場で会っても半兵衛に挨拶はしても、特に他に会話をすることもなく事件の方に集中していった。もう半兵衛の事を気にする理由などないと断じる形で。


















・・・そうして新一が半兵衛を置物のような存在として認識していつものように事件を解決していき、そしてまた事件が起きた為に警察を呼んだのだが・・・そこで新一もだが、共に現場にいた小五郎と蘭からしても予想していなかった事が起きた。









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