いつまでも変わらない今など存在しない

「まぁ官兵衛さんがそう言うなら俺は別にいいけど・・・怪盗キッドはどうするつもり?中森警部を担当から外したのはいいけど、あれを放っておくのは警察の立場としてはあまり良くないんじゃないの?」
「そういった声は放っておいて、基本的にはこちらからは関わらぬようにする。あれを相手にするには殺さぬよう、傷付けぬようにではあまりにもこちらの分が悪いのでな。そして鈴木財閥の相談役である次郎吉氏のキッドに対する挑戦状のような物に関してはこちらに要請がかからぬ限り、出向かぬようにするよう言う予定だ」
「いいの、それ?」
「怪盗キッドを捕らえて手柄にしたいという年寄りの道楽、それも自ら自分の元へ招き入れての物だ。中森警部は怪盗キッドが来るならと様々な事を差し置いて次郎吉氏の元に向かっていたが、犯罪者が来る確率が高いとは言え要請もない場所に自分達から向かう理由にはならん。警察は便利屋でもないし、ましてや個人の感情を優先して行動していいわけでもない。故に逮捕出来る可能性を増やすために実弾とまでは行かずとも、銃器の使用の許可が出ぬなら怪盗キッドの捕縛には乗り切らない方がいいというのが私の考えだ」
「・・・ま、それが妥当かな。俺達が両兵衛なんて呼ばれてた時代なら五右衛門さんみたいに無理矢理捕まえて釜茹でなんて出来たけど、今のこのご時世じゃ人一人を捕まえるにも現行犯でなきゃ特別な許可が必要だしね。それでオマケに向こうは人を殺さない決まりは作ってるんだろうけれど、それでも向こうからすればあれやこれやと捕まらないようにって様々な手を使ってくる・・・そりゃこっちも飛び道具の一つや二つは欲しくなるのは無理ないな~」
そんな中で半兵衛は怪盗キッドについてをどうするかと聞くと、慎重でいて銃器を用いる事が出来るまでは積極的に関わらない方がいいとの官兵衛の答えに、後ろ手を後頭部で組んで気楽そうに昔の事を言いながら同意する。ただ、普通の昔とするにはあまりにもおかしな言葉を口にする形で。






・・・官兵衛と半兵衛、この二人には過去というよりは前世の記憶がある。日本の歴史に名を残す、黒田官兵衛と竹中半兵衛という偉人の記憶が。

流石に下の名前こそは前世と違うが、名字に姿形が前世と同じ上にその時の記憶がある上で互いに顔を合わせて事情を話し合って知ったことから二人は今生をちゃんと生きることに決めた。前世とは違う環境にあるとは言え、今生での自分を生んでくれた両親達に報いるためにと。

そうして互いに近い環境で生きてきたかつての両兵衛と呼ばれた二人が選んだ道と言うか職業は、警察に進むという物であった。主に官兵衛が日本が統一されて平和であり世界相手の戦など望むべくではないと言うなら、警察に入り犯罪の火種をもみ消す事が自分の役割だと言ったことから半兵衛もその考えに同意する形でだ。

ただそうして二人はキャリア組として警察に入った訳だが、ここで官兵衛は自分は警察庁長官官房首席監察官の方を目指すから半兵衛は警視総監を目指すようにするべきだと発案した。下手に二人が同じようにどちらかだけを目指しても警察のより良い発展の為にはならないということでだ。そしてそれを半兵衛もまたすぐに受け入れた・・・本気で官兵衛がその為に行動をすると理解したからだ。

そうして活動してきた二人は警察の中でメキメキと頭角を表し、その仲の良さと名字から現代に蘇った警察の両兵衛と呼ばれるようになっていった・・・それがまさかの真実であることなど、当人達以外に知るよしもなく。









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