いつかを変えることの代償 中編

「・・・多少言い過ぎたようですね。すみません」
「・・・いや、今更だし構わねぇよ・・・ただその金田一でいいのか?気分を変えてぇし、新一とどこまで違うのか具体的に聞きてぇんだが・・・」
「そうですね、お話ししましょう」
明智も流石に申し訳ないと思い謝るが、小五郎が多少気を持ち直して金田一の話題を求めて来たため眼鏡を押さえつつ了承を返す。
「と言っても金田一君は先程に言ったよう探偵を目指していたりしたわけではなく、お祖父様からの縁なのか彼自身がそうなのかは定かではありませんが・・・事件を引き寄せる何かを持っているようで、並の警察では解決出来ないような難事件をいくつも解決してきました。その辺りは工藤君と一緒です」
「・・・ん~、まぁ確かにそこまでは新一と一緒だが、何で金田一は新一と違って有名になってなかったんだ?マスコミならそういう奴にスポットを当てると思うんだが・・・」
「・・・彼がそういった形で有名になることを面倒と思っていたのもありますが、前に彼はニュースに出たこともありますよ。覚えていませんか?作家の橘五柳が自身の作品を謎解きに正解した者が出版出来ると言い出したことから発展し、連続殺人事件になった事とその当初の容疑者が高校生であったことを」
「あぁ、聞いたことがあるが・・・まさかそれが金田一って奴なのか?」
「えぇ、そうです。金田一君は以前に事件を通じて会っていた人物を通じて、出版社の人物からその原稿をゲットするための助っ人として呼ばれたらしいのですが、真犯人が橘を殺した直後にたまたま橘の元を訪れ犯人に仕立てあげられたんです。気を失わされて、凶器を握らされた状態でね」
「マジかよ・・・」
それで明智は金田一についての話を進めていき、一時期事件の犯人扱いされていた事とその経緯を聞いて小五郎は絶句する。






・・・前世で本など例えベストセラーであろうが自分から読むことのなかった小五郎だが、明智の話した事件に関しては記憶によく残っている。連続殺人の理由となった社会を揺るがすノンフィクションの作品・・・それがどれだけ売れたかに騒動になったのかについてを。

そしてその事件についても警察から逃亡した高校生が次々と橘の事件に関係している人物を殺していっていると聞き、他人事ながら恐ろしいもんだと小五郎は口にしていたのを何となくは覚えている。ただそれも高校生が犯人ではないと聞いた上でその作品が爆発的に売れたことで、もう気にかける事も無くなっていたが・・・現実にはこういうことがあったと明智から聞かされ、何気無く聞いていた事とは比べ物にならない事情があったのを感じたのだ。






「・・・この事件に関しては、金田一君が警察から逃亡していなければ恐らくは橘以外の被害者達は連続殺人の被害者としてではなく、単なる物取りや怨恨といった理由で処置されて、その原稿の中身も日の目を浴びることなく永久に闇に葬られる事となっていたでしょう。そして金田一君は無実の罪で少年院行きとなり、以降に彼が関わった事件も誰が解決することも出来ずに迷宮入りしていた可能性ばかりの事件が多々あったでしょう・・・最後のは余談ですがね」
「待て・・・明智、お前も関わっていたなら金田一とやらを信じて謎解きをさせるべきだったんじゃないのか?金田一を無実だと思うならよ・・・」
「私は最初から事件に関わっていた訳ではなく、後で金田一君を捕まえるための応援として事件に関わっていたんです。そして捜査の指揮を取っていた刑事が金田一君が状況的に犯人だと決めつけていた事もそうですが、何より今までの功績があるから彼じゃないとただ単に信じるのは捜査をする人間としては望ましいものではありませんからね。それに警察から逃げるという手段を取っていた彼を捕まえねば事件を解決するにもどうにもならないと思っていましたから」
「あ~・・・どうしようもない状況だったって訳か、色々と・・・」
「そうなりますね」
それで当時の事を思い出しつつもしものシチュエーションを語る明智に小五郎は何故金田一の事をフォローしなかったのかを聞くが、出来なかった理由を聞いて複雑そうな表情を浮かべる。立場上金田一の側にだけ立った事が出来なかったことを理解した為に。









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