いつまでも変わらない今など存在しない
「おっちゃんが白馬の言ってたようなことになるなんて・・・」
・・・一方その頃の快斗だが、話の中身のあまりの衝撃に学校にいてもいられず早退をした後で近くの公園のベンチに腰掛け、頭を抱えていた。
「どうすれば・・・どうすればいいんだよ、俺・・・なぁ、父さん・・・!」
そのまま悲痛な声色で今は亡き父へ助けを求めるような声を快斗は漏らす。
・・・この件で一番ダメージを受けていたのは中森でも白馬でもなく、実は快斗であった。何故かと言えば二代目の怪盗キッドになった目的であるとある組織との対峙の時以外、怪盗キッドとしての活動を誰よりも楽しんでいた為だ。
怪盗キッドは確かに警察側、特に中森から言わせれば泥棒の犯罪者という立場だ。しかしマスコミやギャラリーからすれば正義のヒーローとは言わずとも、スーパースターみたいな認識となっていた。華麗な手練手管で人々を魅了するマジシャンのような存在だと。そしてそうやって紙面だったり人々が怪盗キッドをすごいすごいと持て囃す事に、快斗自身も心地よさを感じていた。
しかしそうして活動してきた事が、中森という存在を不幸に陥れてしまった事に強い衝撃を受けた。目的を達成するまで中森とはずっと怪盗キッドの時に対峙し続ける物だと思っていた為に。
だからこそ快斗からすれば意外も意外な事だったが、更にそこに追い討ちをかけたのが白馬による厳しい言葉の数々だ・・・白馬なら中森を助けられると思ったが、助けた先にあるのはまさかの自分による再度のとどめになりかねないとの言葉だった。
・・・快斗は決して自分が怪盗キッドとして牢に繋がるつもりはない。これは犯罪者の心理としてはある意味当然の物ではあるし、先代の怪盗キッドから続いてきた名誉を守りたいという気持ちもある。だが捕まらないという事を前提とするなら、例え立場を復活させたとしても中森に待っているのはまず間違いなく二度目の怪盗キッドの担当外しという結果のみだ。
そうなってしまえばそれこそ白馬の言ったよう、自分で中森に二度目のとどめを刺すような物だ。一度目がもう現実になってしまった以上、二度目がないと保証など出来よう筈がない。自分でどうにかその処遇を取り下げさせようと得意の変装で警察に忍び込んで行動出来たとしても、同じような事態になれば意味がないどころか自分で再び中森を攻撃するのと同義の行動だ。
そんなことなど中森の事を人間として好ましく思っている快斗からすれば絶対に出来ない事だったが、だからこそどうしようもないとも感じてしまっていた。中森を助けることなど自分の手では出来ないのだと・・・
「・・・良かったの、官兵衛さん?中森警部をあくまで怪盗キッドの担当から外すだけで済ませて」
「あれが火種を起こさないようにするための最善の処置だ。怪盗キッドの手腕については私も知っているが、あれを殺さずに捕縛だけで納めろというのは至難の技・・・それに中森警部自身の人望もある。この辺りが落とし所だと判断した故だ」
「ふ~ん・・・前の官兵衛さんならもっと苛烈に行ってただろうけどな~」
「私も年月を経て多少は考えを変えることが出来たということだ、半兵衛」
・・・所変わり、黒田が監察官として与えられた部屋の中。そこに机に備え付けられた椅子に座る色白の顔に髪の毛の色が白と黒で分かれた妙な迫力のあるスーツを着た男と、その前に立つ幼げな顔をした男がいた。
幼げな顔をした男は目の前の人物を官兵衛と呼び、官兵衛と呼ばれた人物は半兵衛と呼び返しながら話を進める。中森の処遇についてを。
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・・・一方その頃の快斗だが、話の中身のあまりの衝撃に学校にいてもいられず早退をした後で近くの公園のベンチに腰掛け、頭を抱えていた。
「どうすれば・・・どうすればいいんだよ、俺・・・なぁ、父さん・・・!」
そのまま悲痛な声色で今は亡き父へ助けを求めるような声を快斗は漏らす。
・・・この件で一番ダメージを受けていたのは中森でも白馬でもなく、実は快斗であった。何故かと言えば二代目の怪盗キッドになった目的であるとある組織との対峙の時以外、怪盗キッドとしての活動を誰よりも楽しんでいた為だ。
怪盗キッドは確かに警察側、特に中森から言わせれば泥棒の犯罪者という立場だ。しかしマスコミやギャラリーからすれば正義のヒーローとは言わずとも、スーパースターみたいな認識となっていた。華麗な手練手管で人々を魅了するマジシャンのような存在だと。そしてそうやって紙面だったり人々が怪盗キッドをすごいすごいと持て囃す事に、快斗自身も心地よさを感じていた。
しかしそうして活動してきた事が、中森という存在を不幸に陥れてしまった事に強い衝撃を受けた。目的を達成するまで中森とはずっと怪盗キッドの時に対峙し続ける物だと思っていた為に。
だからこそ快斗からすれば意外も意外な事だったが、更にそこに追い討ちをかけたのが白馬による厳しい言葉の数々だ・・・白馬なら中森を助けられると思ったが、助けた先にあるのはまさかの自分による再度のとどめになりかねないとの言葉だった。
・・・快斗は決して自分が怪盗キッドとして牢に繋がるつもりはない。これは犯罪者の心理としてはある意味当然の物ではあるし、先代の怪盗キッドから続いてきた名誉を守りたいという気持ちもある。だが捕まらないという事を前提とするなら、例え立場を復活させたとしても中森に待っているのはまず間違いなく二度目の怪盗キッドの担当外しという結果のみだ。
そうなってしまえばそれこそ白馬の言ったよう、自分で中森に二度目のとどめを刺すような物だ。一度目がもう現実になってしまった以上、二度目がないと保証など出来よう筈がない。自分でどうにかその処遇を取り下げさせようと得意の変装で警察に忍び込んで行動出来たとしても、同じような事態になれば意味がないどころか自分で再び中森を攻撃するのと同義の行動だ。
そんなことなど中森の事を人間として好ましく思っている快斗からすれば絶対に出来ない事だったが、だからこそどうしようもないとも感じてしまっていた。中森を助けることなど自分の手では出来ないのだと・・・
「・・・良かったの、官兵衛さん?中森警部をあくまで怪盗キッドの担当から外すだけで済ませて」
「あれが火種を起こさないようにするための最善の処置だ。怪盗キッドの手腕については私も知っているが、あれを殺さずに捕縛だけで納めろというのは至難の技・・・それに中森警部自身の人望もある。この辺りが落とし所だと判断した故だ」
「ふ~ん・・・前の官兵衛さんならもっと苛烈に行ってただろうけどな~」
「私も年月を経て多少は考えを変えることが出来たということだ、半兵衛」
・・・所変わり、黒田が監察官として与えられた部屋の中。そこに机に備え付けられた椅子に座る色白の顔に髪の毛の色が白と黒で分かれた妙な迫力のあるスーツを着た男と、その前に立つ幼げな顔をした男がいた。
幼げな顔をした男は目の前の人物を官兵衛と呼び、官兵衛と呼ばれた人物は半兵衛と呼び返しながら話を進める。中森の処遇についてを。
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