いつまでも変わらない今など存在しない

「・・・ただ、どうする?中森警部にあぁ言われた手前、快斗君の事に関してどうするべきか・・・」
しかしそういったことを考えている内に、この事態の大本である怪盗キッドの快斗に対してどう行動するべきかと白馬は悩ましげに考える。
「・・・本来犯罪者を見付けたなら、取るべき行動は警察への通報だ。だがあの話を聞いた後で僕が図々しく警察に関わることはあまり望ましくないと思うし、何よりれっきとした証拠が無ければどうしようもない・・・あくまで僕が得た情報は僕が納得出来るだけの材料でしかないからな・・・」
そう悩ましい気持ちになる理由はちゃんとした証拠の一切がないことに、あくまで個人で動いて得たデータで快斗を怪盗キッドと判断したからだ。それは警察を介して出てきた物ではないから逮捕に繋がる証拠になるわけでもない上で、さっきの話が尾を引いていることから心情的な事も相まって簡単には警察に行けないとも白馬は考えていた。
「・・・多分中森警部の事は快斗君にとっても意外な事の筈だ。明日にこの話を聞いた彼がどういった反応をするかだが・・・それでどうするかを決めよう・・・あまり良くない事ではあるだろうけれどね・・・」
そうして考えて出した結論は明日の快斗を見てからと言うものだが、言葉通り白馬の顔は決して明るい物ではなかった。迷いの中にあるからこそ快斗の行動に委ねるという選択に頼るしかないことが情けないと、そう感じてしまっているために・・・


















・・・そうして翌日となった今日に白馬は学校に来た上でクラスメイト達に話をした上で、先程の快斗との話し合いに応じたのだ。それで結果は先程の通り、と言うわけである。



「・・・しかし、あの様子を見る限りでは快斗君は全く中森警部にあぁいった責が及ぶなどとは考えてはいなかったようですね・・・彼の事を言えた物ではないことは承知はしていますが、その辺りは名前の通りキッドだったという所ですか・・・」
それで白馬は考えを快斗のリアクションについてに移行するのだが、皮肉と共に自虐を口にする。自分と快斗はキッド・・・大人以上の能力を持っていると自信満々に振る舞っていただけの、大人としての責任など理解していなかった子どもだったのだと。
「・・・僕はもうこの件から手を引きましょう・・・今の僕では怪盗キッドは快斗君なのだと明かしたり捕まえたりするようなことは、中森警部達やクラスの皆の事を考えれば今の状況では更なる追撃を行うような事にしかならない・・・子どものような事を言っているとは自分でも思うが、あの快斗君の姿を見た後ではね・・・」
そして白馬は苦い想いを感じながらも、手を引く事を選択する・・・白馬自身よく分かっている。いかに自分が甘く、愚かな選択をしようとしているかを。だがこれまでの白馬の人生の中で数ヶ月程度しか一緒にいなかったとは言え、義務的だったり事件のついで程度にしかいなかった場所の人々と比べて快斗達への思い入れが強くなっていることは自覚している。だからこそ今までは関係性が薄かった相手には遠慮なく行けたが、関係が出来た相手に対しての行動がどれだけキツい物があるのか・・・その事を初めて認知した為、今の自分ではこれ以上快斗達との関係をぶち壊すようなことを選択するのは無理だと判断したのだ。
「・・・願わくは、快斗君にも怪盗キッドとしての活動を自粛してほしい物ですね・・・これからの事を考えれば、以降も同じようなことになりかねませんからね・・・彼の腕を考えれば・・・」
そしてそういったように考えるからこそ、白馬は切に願う。中森という前例を知ったからこそ、これからの怪盗キッドの活動で不幸になる人物を増やしたくはないから快斗には自粛をしてほしいと・・・









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