いつまでも変わらない今など存在しない

「黒田監察官と電話越しでも話をしたなら分かるだろうが、あの人はそう言った決まりを無視した行動を取るような事を好まない・・・最初は俺も下らない規則に縛られて怪盗キッドを捕らえられないならそんなのくそ食らえって思って食ってかかったが、さっき言ったような事を言われた上でボロボロに言い返された・・・白馬君は声だけでさっきの短い会話だけだったからまだピンと来なかったかもしれないが、ただ固いだけの人物じゃないんだよあの人は・・・」
「それは・・・確かに意外ですが・・・」
「だろ?それにあの人は警察の中で現代に蘇った両兵衛と呼ばれる内の一人で、もう一人の竹中警視と並んで将来警察を背負って立つ逸材だって言われている・・・白馬君が警察に入って順当に行くなら、二人は直属とは言わなくとも上の立場にいる人間だ。竹中警視に至ってはその時は年月が経っているのもあり、警視正の地位にいてもおかしくない人物になる・・・地位でどうこう人を判断するのが正しいとは言わないが、俺のような行動を取れば君は間違いなく二人を始めとした上の立場にいる人達の不興を買うことになる。特に黒田監察官は監察官という立場もあって、警察官の問題行動を挙げて解決する事が役目にある・・・あの人を敵に回したくないなら、ちゃんとルールを守った上で行動をした方がいい」
「っ・・・忠告ありがとうございます、中森警部・・・」
それでいかに黒田に関してを自分が把握し、どのように考えているのか・・・それらを真剣でいて余すところなく話していく中森に、白馬も今までの事があるために真剣に頷いた。
「・・・さぁ、もう帰るんだ白馬君。時間的に見てもうかなり遅いからな」
「・・・その前に聞きたいんですが、青子さんにはどのように説明するんですか?」
「・・・どうも何もそのまま伝えるしかないだろうな。これは俺の責任だから俺が伝えるしかないが、多分明日学校に行けるかどうか・・・」
「僕が欠席すると話をしておきますよ・・・いつも通りなら明日は怪盗キッドの話題で持ちきりになりますから、僕が今日の事を人に伝えられる範囲で話して以降に青子さんに険が及ばないようにしますが・・・その時に警部の事を話してもいいですか?」
「・・・学校で青子がどんな風に行動しているのか聞いているから、君が話す必要があると思うなら話してくれても構わないが・・・済まない白馬君、君に苦労をかけるようなことを・・・」
「いえ・・・僕も色々と考えさせられましたから、気にしないでください・・・それでは僕はこれで・・・」
「あぁ・・・じゃあな・・・」
それで話を終わらせようと切り出す中森に白馬は青子についてを切り出し、中身が中身なだけに重い空気の中で話が進んだ後で白馬が頭を下げて場を離れていく。中森の惜別の言葉をその背に受け、振り返ることなく・・・


















・・・それで白馬は迎えを呼んで車で家に帰ったのだが、自分の部屋で電気も点けずにベッドに腰をかけていた。
「・・・キッドを捕らえればそれでいいと思っていた、か・・・中森警部の言葉が重く響くな・・・あの人は自分のやったことを後悔していたが、僕はそれ以上の事をしている・・・快斗君が怪盗キッドだってことは間違いないが、それを僕は現場で捕まえなければ意味がないと考えて動いていたんだからな・・・」
そして後悔混じりの独白には、自分の行動への非があった・・・怪盗キッドが快斗だと確信しているが、それを盗みの場で捕らえなければ意味がないと白馬は現場で快斗を捕らえることにこだわっていた。そしてその怪盗キッドに扮した快斗との攻防に関して、今までの事件にない歯応えを感じて白馬もその時の事を楽しみにもしていたのだが・・・今回の中森の件はあまりにも衝撃的であり、現実的な視点からもたらされた事実であったために白馬も自分がいかに甘く何も考えていなかったのかを知らされ、心が重くなっていた。今までにない事態に直面したことにより。









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