いつまでも変わらない今など存在しない

「・・・白馬君。俺に心配というか気をかけてくれる事は感謝する。しかし俺のやってきたことは社会人として、警察官として望ましくなかったことに加えて結果も出せなかったという有り様だ・・・もう怪盗キッド関係で出会うことはないだろう」
「・・・諦めるんですか?怪盗キッドを捕まえるのを・・・」
「そりゃ怪盗キッドを捕らえるのを諦めたくなんかねぇ!・・・だが俺一人だけ処分を受けるならまだしも、それで苦労を青子にまでかけたくはないんだ・・・」
「っ、青子さん・・・ですか・・・」
それで中森が真剣な様子で頭を下げる様子に白馬は確認するよう諦めるのかと聞くが、諦めたくないと強く言いつつも青子の名を出した中森にハッとした表情を浮かべた。中森の家族であり、白馬のクラスメイトである青子の姿を思い出す形で。
「・・・元々俺はキャリア組には程遠い叩き上げの警察官だ。地位的には頑張っても警視正がギリギリって所だが、こんなヘマをしちまったってんなら昇進なんて望めねぇだろう。それでならと開き直って地位なんかどうだっていいなんて行動を取ったらどうなるかって考えたら・・・青子の顔が出てきたんだ」
「・・・青子さんなら自分の事は気にしないで怪盗キッドを捕まえてって言いそうだと思いますが・・・」
「・・・青子なら確かにそう言ってくれるかもしれねぇ。だがそうして怪盗キッドを捕らえることが出来なかったらどうなる?恥の上塗りもそうだが降格に異動なんて事になったら、もうそれこそ目も当てられねぇ事態になる・・・青子を悲しませることになることは重々承知してるが、それ以上に青子を悲しませたり不自由をさせるようなことはしたくはないんだ・・・」
「・・・怪盗キッドを捕らえるという今までの目的より親心を取った、という訳ですか・・・立場を守らねばより青子さんを悲しませかねないからということで・・・」
「あぁ・・・」
・・・親として子どもに苦労をこれ以上かけないため、個人としての執念とこだわりを捨てることを選んだ。
中森がいかに苦渋の想いを抱いて決断したかに白馬も話の中身に重い気持ちになってうつむいたが、そこで中森が白馬の両肩に手を乗せる。
「・・・君の気持ちはありがたく思う。しかし今回の事は起こるべくして起こった事であり、黒田監察官を始めとした警察の上層部が決めたことだ。それでだが君は大人になったなら探偵としてやっていくのか、警察に入るのかどっちなんだ?」
「それは・・・父が警視総監だという立場もありますが、僕も警察に入るのが筋だと考えています・・・ロンドンへの留学であったり、今まで僕が不自由なく活動出来たのは父のおかげでもありますから・・・」
そこから探偵と警察のどちらを選ぶかと質問する中森に、白馬は警察に入るだろうと答える・・・白馬は探偵として今は活動しているが、それらが順調に行っているのは実力もそうだが警視総監である自分の父からもたらされている部分が大きいと白馬自身分かっている為、探偵としての立場で甘えていられるのは精々警察に入るまででなければならない・・・そう父の立場に恩を考えれば、わがままは言えないということから。









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