いつまでも変わらない今など存在しない

『君が中森警部の事を庇いだてしようとする理由は、警部とその子どもと知り合いになっているからという部分もあるのだろう。だがここまでにしておきたまえ・・・君がそのようなことを言えば言うほど、君の父君である警視総監の顔に泥を塗る事になる。それが分からない程、君も愚かではないだろう』
「・・・僕の事も知っているんですね?」
『当然だ。警視総監の子どもが時折事件の現場に現れては、事件を解決しているとの報告は受けている。その事に関しては置いておくが、今回の事に関して抗議をするなりして警視総監の手を煩わせるような事をすれば、君の評価が下がること以上に警視総監が良からぬ目で見られることは避けられぬだろう。故にこの辺りで引きたまえ・・・父上を敵視しているというのであれば私は止めはせぬがね』
「っ・・・!」
そこから黒田が白馬の父親についてを切り出し引くように言い出したことに、白馬は息を詰まらせた・・・白馬は自分の親である警視総監の事を頼った覚えはないと自認した上で、あまり会うことはないが尊敬はしてはいる。そんな自分が父親の力を頼みにして外から迷惑をかけ、自分だけでなく父親の名誉まで傷付けるような事など望んではいないために。
『・・・返事をいただけるとありがたいのだが、どうかな?』
「っ、はいここで引きます・・・この事にはもう関わりません・・・」
『それは良かった。では何も他に無ければ切らせてもらうが、いいかね?』
「・・・はい、時間を取っていただいてありがとうございました・・・」
『うむ。では失礼する』
それで返事を確認した上で電話を切る黒田に、白馬は携帯を複雑そうに見詰める。
「・・・白馬君・・・」
「っ、中森警部・・・すみません、黒田監察官を説得出来ませんでした・・・」
「いや、構わない・・・俺も今回の件で駄目だったなら身を引くことには納得はしていたからな・・・君が気にすることはない・・・」
「中森警部・・・」
そこに後ろから来た中森に振り返りつつ対応する白馬だが、もうこれ以上はいいと完全に諦めた様子の姿に複雑そうな表情に変わる。
「・・・確かに怪盗キッドを捕らえないまま、担当を外される事は俺も心残りではある・・・しかしこれ以上ごねればごねるほど俺は自分の立場を悪くすることになる。だから俺はもうキッドには関われない・・・」
「関われないって・・・」
「・・・監察官が言うには、キッドが関わらない時の俺の態度は問題ない物として見られているがキッドが関わった途端に問題行動が多いといったものだった。そんな俺の行動は本来なら担当を外すと同時に、降格も検討されていたとも言われていた」
「それはっ・・・!」
「酷いと思ってくれるのはありがたいが、俺はそれだけの事をしていたってのをまざまざと思い知らされたんだ・・・不幸中の幸いって言っていいとは思えないが、怪盗キッドの手際を考えて降格はしないで済ませるとなったがもし怪盗キッドの現場に無理にでも顔を出すような事をすれば、その時は有無を言わさず降格することもそうだが地方への出向も有り得るとのことだそうだ・・・」
「っ・・・!」
そこから中森と話をしていく白馬であるが、怪盗キッドにこだわってあがけばあがくほどにまずい状況になるといったような話の中身に苦さを感じずにはいられなかった。中森がいかに怪盗キッドと強い気持ちで向き合ってきたかを知っているが、キッドを捕らえられない無念もそうだが以降は一つ勝手な行動を取るだけでも良くない事態になり得ると理解して。









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