いつまでも変わらない今など存在しない

「もしもし、白馬です」
『もしもし、黒田です』
「っ、貴方が黒田監察官ですか・・・」
まず始めにと当たり障りなく挨拶する白馬だが、聞こえてきた黒田からの声に一瞬気圧されつつも答える・・・電話越しではあるがその声色は非常に重く、それでいてどこか暗さを感じる響きを伴っていた為に。
『いかにも。それで私に何用かと聞きたいが、中森警部の事で電話をしてきたのだろう。どうにかその処置を撤回出来ないかと』
「は、はい・・・そうですが・・・」
『生憎だがそれはもう無理だ』
「な、何で・・・」
『この決定は監察官である私だけが決めたことではないからだ』
「え・・・?」
だが構わず話を進める黒田の声に圧されつつも話を聞く白馬だったが、返ってきた返答に呆けた声を上げた。どうして自分だけではないとの言葉が出てくるか分からないと言うよう。
『・・・警察に限らず組織という存在は一人がこうしたいと決めたなら、そのまま鵜呑みにしてその決定に従うというようなことはない。中森警部の事も同じだ・・・私一人が中森警部の処遇についてを決めた訳ではなく、他の人々がどうするかと協議をした上で出した結論だ。それを私一人の独断、それも外部からの願いであっさりと覆してよいものではない』
「そ、それは・・・」
そこで黒田から出てきた話の中身はこの決断がいかにして決まったかであり、白馬は反論がその中身に出来なかった。理由の中身として団体で話し合って決めたことに個人的な感情を差し挟むのは望まれないと、まさにこの申し出を個人的な感情で切り出した白馬にとっては痛い言葉であった為に。
『それに中森警部当人にも伝えてはいるが、警部の勤務態度も問題があったからこそこのような処置を取らせてもらった』
「勤務態度・・・?」
『怪盗キッドが予告を出してきた際にはそれまでしていた仕事を放り出し、キッド対策にと意気を上げて取り組み元の仕事を全くしなかったことだ。そしてキッドを捕まえられなかった時に悔しさからであろうが、しばらくは仕事が手についていなかった時もあるとの周囲からの報告も上がっている・・・確かに犯罪者を捕らえようと気炎を吐くこと自体は悪いことではないだろう。しかし本来為すべき役割を放棄して自分のやりたいことを優先することもそうだが、失敗をすればまた他の仕事にも差し支えるような状態となる・・・これが問題でなくて何と言うのかね?』
「それ、は・・・」
だが黒田はまだあると中森の勤務態度についての問題点を口にしていき、その中身にまたもや白馬は口ごもってしまう。怪盗キッドを捕らえるためならやらなければならない仕事を放棄しても何の問題もないなど、常識的に考えて大丈夫だなどと言えない為に。
『そんな中森警部の行動に関して、問題視はされながらもその熱意を買われる形で怪盗キッドの担当を続けてきてもらっていたが・・・それも今回までと言うわけだ』
「・・・結果が出なかったから、今までの事も含めて責任を取ってもらったと言うことですか・・・」
『そうなるが・・・今更で済まないが、君は白馬警視総監の息子である白馬探君だね?』
「え・・・あ、はい・・・そうですが、それが何か・・・?」
それで機会があった上でこれまで来たことを黒田は口にするのだが、唐突に自分の身分についてを聞かれた事に白馬は何故そんなことをと戸惑いながら答える。









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