いつまでも変わらない今など存在しない

「・・・君が怪盗キッドとして答えるかどうかは関係無く言わせてもらうが、これでまだ中森警部に戻ってきて欲しいだなんて言えるようなら、君は酷だとかそういったレベルでないことを言っている。怪盗キッドが自首をしに来るならともかく、これからも捕まる気もなくまた行動をし続けるつもりならそれは中森警部を助けたつもりではあっても、二度目のとどめをまた君が刺すのと同義の行動だ」
「なっ・・・!?」
「それとも君は中森警部が相手なら余裕で勝てるどころか、パフォーマンスを見せることすら出来るから復帰してほしいとでも言うのかい?・・・だったらそれこそ酷な事を言っているのは君の方だ。君は中森警部の事を下に見下しているばかりか、自分が楽をするために警部を復帰させようとしているのだからね」
「っ・・・!!」
怪盗キッドとして・・・そう前置きをした上で白馬はいかに残酷かもそうだが、いかに人として中森を馬鹿にした狙いがあるかを仮定した言葉を口にし、快斗は瞬時に怒りを浮かべかけたが出そうになった言葉を歯を強く噛み締める事で耐えきった。ほぼ自分が怪盗キッドと自白したかのような行動だと気付いていないのはともかく、それでも「そんなつもりはない!」とでも言えば自分が怪盗キッドだとバラすような物・・・そう快斗の最後の理性を持って考え、ギリギリで押し止める形で。
「・・・大まかにこういった理由ではあるが、僕は中森警部の処遇をどうにかと父に願う事はしないと決めた。それを変えるつもりはないし、中森警部に更なる苦境を味わってもらいたくもないし、何よりそうなれば娘である青子さんも同じように辛い目に合うだろう・・・それでもどうにかしたいと言うなら、これ以上この件で僕は君に関わるつもりはない。それだけはハッキリ言わせてもらうよ」
「っ・・・!」
そして自分はこれでこの件から手を引くと迷いを見せずに言い切る白馬に、快斗はうつむいた後に黙ることしか出来なかった・・・もう色々な意味でどうしようもないと、いくら回る頭を回転させた所で白馬に理解させられた為に。






・・・それで快斗は少しして力なく屋上から立ち去っていった。白馬に何も言うこともしないまま、出来ないままに。
「・・・あれでは自分が怪盗キッドだとほとんど明かしているような物だということに気付いていないでしょうね、快斗君は・・・」
そんな後ろ姿を見送った白馬は何とも言いがたそうな視線を向けながら呟く。決して快斗だけでなく、白馬にとっても心地良くない状況であったために。
「・・・だが僕も人の事は言えない。これからはちゃんと僕も自制をしなければ・・・そうでなければいずれ入る警察で黒田監察官に失望されるだけだろうからね・・・」
しかし心地良くないとは言えそうしなければならない理由が白馬にはあり、その理由は独り言で口にした黒田という人物にあった・・・



















・・・実は白馬が快斗に対してあのような事を言えた理由は、白馬が個人で考えたことではない。ならば何があったのかと言えば、昨日の事件の後に中森に誰がそんなことを言い出したのかと聞いたのだ。その時の気持ちとしては仲良くなったクラスメイトの親を助けたいという考えで。

それで中森はその人物について教えることを渋っていたが、報告の為に電話をしなければならないとの事からその人物に中森に許可を取ってもらい白馬は自分の電話で連絡をしたのだ。それが黒田という監察官であった。









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