いつまでも変わらない今など存在しない

「・・・どうやら反対する人はいないようだが、続けて聞いてほしい・・・今まで僕達は怪盗キッドの予告が届き、事件が起きる度にその騒動を楽しむというか日常としてきました。快斗君などは怪盗キッドに好意的な事を言ったり、青子さんはそんな人達に対して対抗的な事を言ってきて、僕自身も怪盗キッドを歯応えのあるライバルのような存在だといったように認識してきた・・・だが今回青子さんとその父親である中森警部に起きた事は、決していつもの日常にして軽く流していいものではありません。むしろ教訓にするべきだと僕は思います・・・このように人は一つのきっかけで不幸になりえるということを」
「「「「っ・・・」」」」
その上で話を進めていく白馬の言葉に、クラス全員が一斉に暗い面持ちを浮かべて沈黙してしまう・・・普段こそは怪盗キッドについて良くも悪くも盛り上がるクラスであるが、それでもこうして中森親子に実害が出たとあっては基本的に悪人のいないこの環境では誰も茶化したり、ましてや中森親子がキッドを捕らえられないのが悪いなんて言えるような人物などいないために。
「・・・っ!」
・・・そんな環境だからこそ、快斗はただ拳を握り締めて耐えていた。今までにない事態、そして想定していなかった事態の中でも最悪の事態に出会ってしまったことに・・・


















・・・それで白馬から集められたクラスの一同は白馬の案に頷き、下手に怪盗キッドについてを青子に言わないようにだったり聞かせないようにと取り決めるようにした。だがその中で一人、昼休みに白馬を呼び出して屋上で話をする人物がいた。それは・・・



「・・・父に言って中森警部に怪盗キッドの担当に戻すようにしてくれ?」
「あぁ・・・お前なら何とかならないか、白馬・・・?」
・・・怪盗キッドでこそあるが、同時に中森をどうにか元に戻したいと考えた快斗であった。
どうにか中森を元の立ち位置に戻してほしい・・・そう願う快斗は白馬に伺うような視線を向けるが、力なく頭を横に振られる。
「・・・生憎だがそれは無理だ」
「何でだよ!?お前の親父さんは警視総監だろ!?」
「理由はいくつかあるが、まず一つは僕の父親がそう言えばたちまちにそう言ったことにはなるだろうが・・・中森警部の警察内での立場はまず間違いなくまずいものになる」
「なっ、なんで・・・!?」
無理と返す白馬に何故と声を大きくする快斗だが、理由の一つにより動揺を露にする。
「単純な話として言い方は悪いが、警視総監が一警部の処遇を無しにしろなんて命令を下せばどういうことだとなるからだ。警視総監という立場にまで行けば警部という現場レベルの人間の処遇を行う事などないとのことだが、それを警察のトップである警視総監が行ったとなればどういったコネがあるのかと言われるだろう。そうなれば父に疑心は集まるだろうがそれを直接指摘する人物はそうそういないと見られるが、中森警部はその限りではない・・・何せ階級的には警部でしかないから他の警察官からはどういった事が起きたのかと直接的か間接的かはともかく、疑心が向けられることは避けられないだろうからね」
「それがまずい理由だってのか・・・!」
「それでも中森警部の人格的に警部を慕ってくれたり上の地位の人間でも守ろうとしてくれる警察官はいることはいるでしょうが、外からその光景を見た大多数の中森警部と関係していない部外者がいい気分になるか・・・僕は絶対に大丈夫だとは言えないと思います」
「っ・・・!」
その理由についてを詳しく話していく白馬の重い語り口に、快斗は苦い顔を浮かべた・・・理不尽な暴力が嫌われるのは当然だが、不可解な権力の横暴が嫌われるのもまた当然・・・中森がそんな形で罰も何もなく現場に戻るようなことになれば周りの目も厳しくなったり、邪推してくるのも大いに有り得ると感じた為に。









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