いつまでも変わらない今など存在しない

・・・現代に蘇った警察の両兵衛と呼ばれる、二人の人物・・・これはそんな二人の内、一人が動く話である。警察の意識改革の為に・・・


















「おのれ、怪盗キッド・・・また予告を出してきたか・・・!」
・・・警視庁の中にて、机に拳を当てながら怒りに震える中年の男性がいた。その人物は中森警部という怪盗キッドを昔から敵視し、自身で捕らえようと躍起になっている人物だ。
今日も何度目かの怪盗キッドからの犯行の予告が送られて来たことに中森はやる気を出していた。今度こそ怪盗キッドを捕らえてやると。
‘トゥルルルルルル’
「ん・・・はい、中森」
そんな時に机の上の電話が鳴ったことに気を取り直しながら中森は受話器を取る・・・そこからだった、中森を始めとした周囲の人物達の運命が変わり始めたのは・・・


















・・・それから数日後。怪盗キッドにより予告された日付の、目的の宝石が展示されている美術館にて・・・
(・・・なんだぁ?中森警部の表情がいやに固いっていうか、厳しそうな物になってるっていうか・・・)
・・・怪盗キッド、その正体は中森の住む家の隣に住む黒羽快斗という少年である。
そんな快斗は宝石を盗む際の常套手段として警備にあたる警察官に変装して現場に入るのだが、その警備に当たっていた中森の顔が複雑そうな物であることに快斗は内心でどういったことかという気持ちになる。今まで何度も現場で出会ってきたのだが、その時の顔は大抵怒りややる気に満ちている物だった為に。
(・・・ま、俺には関係無いな。警備の状態はこんな感じか・・・)
しかし快斗は別に気にする必要はないと考えを切り替える。メインにやることは宝石をいかに鮮やかに盗み目的の物であるかを確認することで、そこに意味があると思い直し・・・


















・・・そして少し時間が経った後、結果として言うならお約束とも呼べる形で快斗はあっさりと宝石を盗み出して警察を煙に巻いて逃げることに成功した。

ただ快斗が怪盗キッドとして姿を現した際、中森が今まで以上に必死になり自分を追い掛けてきて取り逃した際にやけに肩を落としていた姿を最後に目撃していた。今までなら怒りを露にして、次に捕まえると言った言葉を吐くのが大体のパターンだったのにだ。

しかし快斗はその時には少し気になると言った程度で、特に理由を探ろうとすることなく目的の物かどうかを確認した後に場を後にした。そして翌日・・・






「おい聞いたか、快斗!また怪盗キッドがやったらしいぜ!」
「流石だよな、いつも!」
高校にて友人達とニュースになっている怪盗キッドの事を楽しそうに話す快斗。
「でも今日は中森はどうしたんだ?いつもならここであいつの声が聞こえてくる筈なんだが・・・」
「それが、何もあいつ言ってくれなかったんだよ・・・家に行っても誰も出なかったし、携帯に連絡しても返事もくれねぇし・・・」
だが友人の一人から教室にある人物の姿がないことを口にされ、快斗も訳が分からないと表情を微妙そうに変える・・・この場では中森と呼ばれているが、名前は青子と言い快斗の幼なじみのような存在だ。そして怪盗キッドの話題で盛り上がるクラスの雰囲気に対し、親の中森がキッドを捕まえるという気持ちに感化されて文句を言ってくる存在でもある・・・そんな存在がキッドの事件の翌日に顔を見せないことなど、今まで全くなかった為に。









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