独りよがりの愛は二度終わる

「・・・多分なんてそんなものじゃなく私に前世の記憶という物が無いというか、普通の子どもだったならただ二人の喧嘩に泣いているだけだとかどうとも出来ないと震えているだけというような、ろくでもない状態以外になっていなかっただろうな・・・」
ただそこでマリーは自分に前世の記憶があることを口にしつつ、自分でなかったら酷いことになっていただろうとも口にする。とてもいい事態にはなっていなかっただろうと。






・・・マリーにはこの世界ではない別の世界で生きてきた記憶がある。元々呼ばれていた名前からマリーダ・クルスという名前をもらい、波乱でいて激動の人生を生き抜いてきた記憶が。

そしてその波乱でいて激動と呼べる理由の一つの中に、その世界で新たな人類と呼ばれることになった者達の能力を人為的に身に付けるように出来る調整を施された事があったのだが・・・何の因果かマリーはその調整を受けた事により得られた能力を今生でも持ち合わせる事になった。と言ってもその調整のせいでかなりの負担が心身にかかっていたのが、今生ではその負担がないという形でだ。

それでなら何がその能力なのかと言えば、それは感受性が直感や洞察力や観察力だったりといった能力が普通の人間より優れた物であるといったような物なのだが、その能力により人だったり強い意思を発する者の気持ちやら感情やらを普通の人間よりダイレクトに受け取る事が出来たことで、新一と共にいた時に出会った事件の犯人が隠しているのであろう気持ちやら何やらについてを理屈抜きで理解したのである。トリックやら何やらについてはともかくとして、事件の犯人はこの人物だということを。

そして先に話に出たようにそんなマリーの直感について、新一はどうにか自分の子どもなのだから自分と同じ探偵となるよう、役立てないかというように考えたがマリーはそんな気はないというように意思を示した・・・確かに犯人は分かることは分かるが前世の経験があっても新一のように推理で頭が回るわけではない事もあるが、何より事件現場に漂うプレッシャーは前世の環境とは違う異様な物であって、とてもではないが常にその中に身を置きたくないとマリーは感じたのである。人が人を殺して騙すばかりか人にそれらをなすりつけたいだったり、場にいた容疑者達は誰が犯人なのかを疑い恐怖するという負の念の入り乱れる環境に。

そしてその点で新一がいかに常人からかけ離れているのかについてもその時からマリーは強く感じていた・・・もうマリーが生まれる前ですら何百もの事件と出会う経験をしてきていて、それらの負の念の渦巻く環境にいてもものともしないどころではなく、むしろ通常の何も事件が起きない時の方が気持ちにハリがないとばかりになっている。そして事件に集中して事件の全貌が解明してそれらを犯人達に明かしていく時の様子は、そんな通常の時とは比べ物にならない程にイキイキしている物だとマリーは感じたのである。それこそが新一にとっての至上の喜びに快感であるというよう。

ただこんなことを言っても新一は自分はそんなことはないし、事件に真剣に向き合っていると言うのは目に見えているからマリーも何も言うつもりはない。ただどうしても自分に向けての態度もあって考えてしまうことになったのである・・・探偵や事件が起きることと蘭と共にいることを何より優先する新一は、最早前世での環境における戦場に楽しみを見出す兵士のようなものであると共に、こんな人間が戦場での兵士を育てるだとかというのならともかく何もない穏やかで普通の人間を育てるなんて到底出来る物ではないと。









.
25/30ページ
スキ