一方的な正しさは許される物ではない

「・・・つーか本当に今更なんだが、新一からしての探偵って奴は事件の事を推理することがメインなんだろうな・・・いわゆる普通の探偵がやるような素行調査なんかのような仕事は自分って言うか、本当の探偵がやるような仕事じゃねぇって感じに思ってよ」
「むしろ彼の場合は素行調査の類いの依頼は家に直接行って、様々な状況からずかずかと証拠を見付けていって推理していきそうですけれどね。ただそれを依頼者だけでなく、対象者にまで直接聞かせて一悶着起こして警察沙汰にして一件落着・・・の流れにするのが新一君のスタイルになる可能性が高いと思います」
「・・・有り得ねぇって言いたいが、あいつならそうしそうだって思えるのが嫌だな・・・」
「安室さんにも言いましたが、僕は目的の為に手段を問わない姿勢は否定はしません。ですが新一君は手段が目的・・・つまりは推理をすることが目的と言った節どころではなく、推理をしたいといった願望に満ち充ちていると僕は見ています。そして推理物によくある展開は今までの推理を当事者達を集めた上で、犯人に突き付ける場面があることです。ただ、そこで揉め事が起きるかどうかなどは考えの中から度外視と言うか・・・揉め事が起きれば自分なら対処出来るし火の粉を払えばそれでよし、何事も起こらず対象が自白すればそれでよしとどちらでも解決すれば問題なしと考えるでしょう。ただ・・・そうして対象者が探偵、それも工藤新一という存在を雇ったという事実を知る形になったことに以降の依頼者については気にもしない形でです」
「・・・謎は解けて依頼は完遂したんだから、もう後は問題ない・・・そう思うからか・・・」
そんな会話を別の方向にしようと新一の探偵としての活動について切り出す小五郎に対し、頼人がこういったように活動するだろうといった予測を口にすると深く重い表情を浮かべる。そんな事など有り得てはならないというように。






・・・頼人は自分で言ったが、目的に対して手段を問わない姿勢については否定はしない。実際に頼人はLとしての前世で最後に携わった事件の中、犯人の正体を暴くために刑務所の犯罪者を利用して命を奪おうとした事もある。結局その目論見についてはその犯人に間接的に止められて殺されることになったが、その際に犯人が確信出来たことから周りの意見はどうあれ犯人を確定させるために取った手段には誤りはなかったと今も頼人は思っている。

ただそうして目的の為に手段を問わないとは言え、そこに自覚がなければならないとも頼人は思っていた・・・自分がどんな手段を取っているかの理解もそうだが、どんな責任があるかの自覚が必要だと。そしてその自覚があった上で目的の為に手段を問わずに動くこと・・・例え周りから批難されようともその考えを揺らがず貫くことが必要なことだと。

その点で頼人は自画自賛の形になるがそう出来ていると自認しているが、新一達にはそういった自覚・・・特に自分達が批難されるという事に対して自覚がないと、ハッキリ言えた。そしてその批難に対する自覚がない理由は、自分達が正しい立場にいるという風にしか考えていない所にあると頼人は考えていた。









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