一方的な正しさは許される物ではない

「とは言えまた何かあったなら僕に連絡をください。新一君達の事に関しては僕も無関係ではいられませんし、何より蘭さんや有希子さんの事を考えると強行手段として全部話した上で、無理矢理毛利さんに色々と頷かせにくることも無いわけではないでしょうからね」
「えぇ、その時は頼らせていただきます。今回もこうして協力していただいた事に感謝させていただきます」
「気にしなくていいよ。僕もこの事に関しては関係者だし、ズレてるかもしれないけれど毛利さん達を騙していた分の罪滅ぼしも兼ねてこうして協力しているのですからこれくらいはしないとね・・・じゃあまた何かあれば連絡を」
「はい、分かりました。ではお元気で」
そして安室がそろそろ話を終えるといった流れに持っていき、また何かあればとの言葉を頼人は口にする。






・・・それで安室が自分の部屋から出ていった後、頼人は小五郎のいる部屋に入った。
「・・・安室さんは帰りましたよ。予想通りの反応をしてくれましたし、蘭も含めて工藤一家を黙らせてきたと報告してくれました」
「そうか・・・これでもう新一や優作さん達とはかかわり合いにならなくて済むんだな・・・」
「今更ですが本当にいいんですね?もう工藤一家もそうですが、蘭とも自分から会わないし会いに来てくれる保証もないままアメリカで暮らす事は」
「構わねぇよ、もう決めたことだ。そりゃ蘭の子どもで俺の孫くらい腕に抱きたいみたいな気持ちも全くねぇ訳じゃねぇが、就職なんかそう簡単に出来ると思えねぇし・・・苦労を承知で探偵に戻るにしたって、新一のおこぼれだったり慰めを受けて仕事をするなんざゴメンだ。一応俺らが事実を隠してるってのを差し引いて考えたって、あいつが俺の為にそうしようなんて考えられるんじゃねぇかってのはな・・・」
「そうですか。なら僕がこれ以上言うべきことではありませんね」
そして報告がてらに改めて帰らないのかを聞く頼人だが、全く揺るぐことなく帰らないと言い切る小五郎のその姿にそこで話を終わらせるように漏らす。






・・・これまで新一は自分を探偵だと言ってきたが、大学を卒業して成人という立場にあることから晴れて職業としての意味での探偵に就くことを宣言した。それもどこか大手の事務所に就くような事などせず、小五郎のように個人事務所を設立する形でだ。

尚その際に小五郎のいた事務所を使いたいと英理に蘭共々願いに行った新一だったが、現在契約している契約者達が頷かなかったことからそれは実現しなかったのだが、そこは問題ではない。問題なのはそんな新一は小五郎が探偵として復帰して日本で活動するとなったなら、罪悪感なり善意なりで小五郎に対して働き掛けを行うだろうという可能性が高いということだ。

頼人達は安室に黙ってもらってこそはいるが、組織について知り得たことを他に言うようなことをするつもりはない。だからこそ日本に戻ったとしたなら新一達は申し訳無さから小五郎に働き掛けをしてくる可能性は十二分に有り得るのだが、小五郎からすればそれはお情けと言うか・・・馬鹿にされたような物にしか感じられない物だ。

その理由は新一からしての気遣いだとか能力を判断しての物になるのだが、出来るか出来ないかの判断を下す云々の前に小五郎は義理の父親という立場にある・・・それなのに義理の息子から能力を見られた上で自分より下と判断され、小五郎なら大丈夫と見られた簡単そうな依頼をお情けで任される・・・様々な事情があることを差し引いて考えたとしても、小五郎の立場にプライドと言うものを立てていない行動と言えた。

小五郎も今となっては自分の能力については理解はしているが、だからと言ってそんなことを易々と受け入れて生活するほどにプライドを捨てるつもりはない・・・しかし新一達は何も小五郎が知らないからと言って手を貸そうとしてくるだろう。だからこそ小五郎は他に理由はあるが、そういった事をされるのを嫌だと思って日本に帰って再び探偵としてなどという気にならなかったのだ。









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