一方的な正しさは許される物ではない

・・・そもそも探偵という職業は、一般的には目立ってなんぼという職種ではない。むしろ人の目につかないように事を進めるのが普通な職種であり、時には人に恨みを買うことも有り得る職種なのだ。

依頼者から調査するべき対象についてを調べてほしいと言われ、依頼を受けたならその為に行動を起こす・・・端的に言ってしまえば探偵の仕事内容はこうなるのだが、その過程の上で悪感情を向けられることは日常茶飯事とは言わないにしても珍しいとは言えない。何故なら依頼者がいるとは言え、ろくでもない秘密があるという引け目があるとは言えそれらを明らかにされることを怒りを始めとした負の感情を向けてくることは珍しくないからだ。

これは探偵という職業にやっている事柄からある程度仕方のないことではあるし、頼人もLという世界最高の探偵と呼ばれた前世があることから名もそうだが、顔が売れることのまずさは十二分に承知している。前世の自分は様々な難事件を解決こそしてきたが、その規模と解決した事件の厄介な物が多かったことから何らかの理由・・・端的に言えば自分の能力を欲してか、逆に自分の能力に成果を排除しにかかるといった行動を起こされる可能性があったと考えてだ。

・・・有能であることもそうだが、有名であることは時として害に発展することは大いに有り得ることだと頼人は認識している。だが新一は一切そういったことを考えてはいない・・・自分と言うよりは自分という探偵が、怒りや恨みなど買わないし気にしないといったよう何も考える素振りなどなくだ。






「探偵は依頼があれば様々な手練手管を使い、その依頼を達成する過程において普通なら犯罪と称される手段を使う人もいます。その代表的な物として尾行に盗聴といった行動は必要だからこそという考えだからこそと言えますが、探偵として事件や依頼の解決の為に何をしても許される・・・そっくりそのままとは言わずとも、それに近いことは新一君や優作さんの中にはあるでしょう。ですがそれらの考えや自覚に改善を求める事は最早無理でしょうね・・・蘭も含めて工藤一家がそういった事をどうにか変えることなど」
「まぁ変わるにしろ変わらないにしろ、もうアメリカに帰れば君に毛利さんは新一君達とかかわりあいになる事はないんだろうね・・・」
「えぇ、あの人達が自ら来るなら応対はしますが歓迎はしませんよ。まぁあからさまに露骨に態度に表すつもりはありませんが、もうこちらからは会うつもりはありません。母さんにはその分色々と苦労はかけますが、対策も講じて授けてますから母さんなら大丈夫ですよ」
「その辺りも抜かりがないのが本当にすごいな・・・」
そしていかにそんな工藤家をどうにかすることが無理かに、改善しようとどころか接することすら切り捨て英理に対策まで授ける頼人の徹底振りに安室は若干口元をひくつかせた笑いを浮かべるしかなかった。
「そういう貴方はどうするんですか、安室さん?この五年で貴方はほぼ新一君達と顔を合わせていなかったとお聞きしていますが・・・」
「まぁ、僕は単純に公安としての活動が忙しかったからね。ただ新一君は僕の携わる事件に首を突っ込みたいといったように電話で言ってきたことがあるが、そこは丁重に断ったよ。そしてこうしてまた君達と話をしてそれが間違いでなかったことを確信した・・・多分結果だけを見るなら成功はしても、新一君は以降の公安の仕事に我が物顔で顔を出すことも有り得たようにすら思うからね」
「そうでしょうね」
「まぁ昨日の結婚式には五年前の縁があったから顔を出したが、僕ももう彼らと自分から顔を合わせるつもりはないよ。君達の話を聞いた後だから言えるが、彼らを頼る気にも交流する気にもならないからね」
「その方がいいでしょう。特に貴方のこれからの立場を考えると」
頼人はそんな安室にそちらとしての対応はどうするのかを尋ね、同じように無関係を貫くといったような返しに同意をする。意味深な言葉を添える形で。









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