一方的な正しさは許される物ではない

「・・・優作さんに有希子さん。お二人は今の話を聞いてどう感じられましたか?」
「・・・話はしないよ。貴方は我々にそうすることを望んでいるのもあるだろうが、新一の事を任せっきりにして毛利さんにそこまでの被害を与えたのは我々の落ち度でもあるだろうからね・・・毛利さんもそうだが英理さんから言わせれば事情を知りながら直接側にいなかった私達が何を言う、という話にもなるだろう・・・」
「でもそれだと、小五郎ちゃんに何も出来ないままに終わるから・・・せめて、小五郎ちゃんに謝罪の意味も含めたお金を渡すのはどう?」
「すみませんがそれは止めてください」
「えっ、どうして・・・?」
そんな二人から工藤夫妻へと確認を向けると二人も真剣に受け止めるが、有希子の発案に安室はすぐに制止をかける。
「言ってはなんですが、あまりにも露骨な上に怪しまれますよ。有希子さんがどれだけの金額を毛利さんに渡そうと優作さんと言おうとしたかは分かりませんが、それでもそれなりに高額のお金になるだろうことは想像はつきます。ですがそんな金額を理由もなしに渡そうとしたところでどういうことだとなりますよ」
「で、でも小五郎ちゃんなら喜んで受け取ってくれると・・・」
「その前に妃弁護士に頼人君から何故だと言われるのがオチですよ。毛利さん一人ならまだしも今の二人がそんな唐突に渡された大金について疑問に思わない訳がないでしょう。特に妃弁護士なら理由なしで何でそんなお金をと追求してくるでしょう・・・理由を聞かれたらどう答えるんですか?」
「そ、それは・・・」
「有希子、止めるんだ・・・安室さんの言っていることは間違っていないし、下手をすれば理由を言わなければ言うまで引くつもりはないと言われることも有り得る。それに何より毛利さんの件と関連しているのではと疑われてしまえばどうなるか分からないからね」
「・・・貴方・・・」
その案に対していかな危険が待っているかを説明する安室の理路整然な言葉達に、有希子は反論したそうだったが優作の言葉にすぐに辛そうに表情を歪める。
「理解していただきありがたいと言いたい所ですが、今までの様子から見て毛利さんに戻ってきてもらうこともそうですが、毛利さんの住まわれている所に行くことも望ましくないでしょう」
「それは・・・もしもの事を考えてですか?」
「えぇ、こういうことは言いたくはありませんがこれまでの事で良心の呵責に我慢の限界と理由は様々あれど、貴殿方の誰かが秘密を明かしかねない可能性を大いに感じました。それに毛利さんは来訪はするなとは言われてはいませんが、だからと言って是非ともこっちに来てくれとも言ってはいませんでした・・・勿論毛利さんなら普通に会いに来る分には歓迎はしてはくれるでしょうが、それでもあまり無理に来られても毛利さんは喜びはしないでしょうけどね」
「・・・毛利さんの住む場所に心境も考えれば、無理に直接会いに行くことも望ましくないということですか・・・」
「はい。理解していただけたなら、是非とも貴殿方四人に約束をしていただきたい。余程の事が無ければ毛利さんの元に行くのもそうですし、組織関連の話題を話すことはしないと」
「「「「・・・」」」」
その上でこれまでの流れをまとめた後でもう不用意な接触はしないようにしてほしいと言う安室に、四人は一斉に苦い表情を浮かべた。理解はしつつも、完全に納得は出来ないといった様子で。









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