千夢一夜の終わりに見る実像

・・・そう新一が決めてからは優作達の動きは早かった。まず『江戸川コナン』を『工藤コナン』として引き取ったというように戸籍を作成して手続きを行った。そして秘密裏にという形で『工藤新一』について行方不明者というように届け出るようにもだ。

この行方不明者というのは『工藤新一』という存在を死亡扱いにするのに一番妥当な手段だからである。行方不明者は数年経てば死亡扱いに出来るがそれは捜索願が出されてからという物であって、いつまでも優作達が生きていると新一がいない状況で言い続けるのもおかしな話ということから、そうするのが一番まともに進むだろうとだ。

だから優作達は新一の事について聞かれたら周りに心配されないように言わないようにしていたが、タイミング的にコナンが二年に上がった時には時折あった連絡が一切無くなって捜索願を出していたけど、それで新一が見つかる事はないまま進んでいる・・・というように言う予定でいる。勿論新一の事を心配しているといった演技をした上でだ。

そういったことから新一を『工藤コナン』として引き取るという手続きをし終えた後で、帝丹小学校から転校という形を取って共に三人で海外へと旅立っていった。それで阿笠には一応事の経緯については話してはおいた・・・基本的にもう海外を拠点にして日本に帰る事はせず、用事があっても新一は日本に連れて帰る事もしないしそもそも帰らせるような事もさせるようにはしないが、それは博士にだけは伝えてはおくが他には誰にも言わないようにしてほしいと。

ただそんな風に言われて阿笠は日本に帰らせる事もさせないのは流石にというように言ったが、そこはもう下手に日本に戻ってやはり日本で暮らしたいというようになっても良くないことだというように言い、渋々という形ではあるが納得してもらった。もうこれからの事を考えれば『工藤コナン』となった新一に問題を起こされてしまえば、厄介事にしかならないということで。

そうして阿笠に話をしてから海外に拠点を移して少しの間を主に新一を学校に通わせる準備の為に費やした上で、新生活を始めて行くのだが・・・そこから先の生活で新一は表向きこそは明るく振る舞いはしていたが、内心は全く心の躍る事がなくて憂鬱な生活を送るばかりだった。それは何故かと言えば日本に戻ることが出来ないということもそうだが、事件に関わる事が出来ないというようになったからだ。

海外での暮らし自体には忌避感はなかった。食に対してこだわりは特にないし英語も昔からネイティブに話せるくらいには堪能だったことから、周りとのコミュニケーションには困る事は無かった事から・・・だがそこには蘭を始めとした昔から見知った顔はどこにもいない事もそうだが、何より推理を必要とする事件に関われなくなった事が新一にとって苦痛で仕方なかった。

他の知り合いもそうだが蘭が近くにいないことがこれだけ精神的にクる物なのかと新一は感じざるを得なかった。一方的に蘭と一緒にいれているという実感があったからモチベーションは保ててたが、もう二度と近くで声も聞けないし顔も見れないという状態になったことに非常に気持ちが落ち込む事になった。

その上で周りで事件が起きても自分で事件を解決すること自体が望まれないと言われて、最初こそは前みたいに自分が解決したのではないと誤魔化すようにして、その裏で動けばいいと新一は思っていた・・・だがそうするしない以前に日本と違い事件が起きても、それは推理が必要な事件ではなく新一だけでなく優作もだが誰から見ても、突発的でいて考えなしの兇行といった犯人がすぐに分かる事件ばかりだったからだ。

この辺りはお国柄の違いだったり環境の違いもあってであるが、そんな物騒でしかない事もだが推理をするまでもない事件しか起きないことに、新一の気持ちはより一層落ち込む事になっていき次第に何の気力も見せることが出来ずに、ただ生きる屍に等しい状態になっていった・・・









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