一方的な正しさは許される物ではない

「事実を言って誤解を解きたい・・・そう思うだけなら別に問題はないでしょう。ですが貴女は口では誤解を解きたいといったように言いつつも、その言葉の端々にこうなり得るという予感めいた物を僕は感じました・・・新一君のやってきたことを許さないことを許さないし、許さないなら許させると言った気持ちで否定を返された場合に毛利さんに強行的な行動を取る予感を」
「なっ・・・!?」
「心外だと思われるかもしれませんが、今の貴女の様子を見ての僕の率直な意見です。気分を害されたというのでしたらそう言ったことには謝りますが、僕はそういった事態になることは十二分に有り得ると思ってますし・・・何より、今事実を言った所で毛利さん達が新一君のやったことを無条件で考えなしに許す方が僕は考えられないんですよ」
「「え・・・?」」
前半は蘭に対する盛大な危惧、後半は小五郎達の許しは簡単ではない・・・前半の方には怒りで顔を染めた蘭だったが、謝罪しつつの後半の安室の言葉に新一共々呆けた声を上げた。何故話しても許されないのかと。
「新一君・・・そもそも君が阿笠博士に事実を話はしても、毛利さんにそれを言わなかったのは毛利さんでは力にならないと思ったからではないかい?」
「なっ・・・お、俺はおっちゃんを巻き込みたくなかったから・・・!」
「それは言葉回しが気に入らないと言っているだけだよ、新一君。現に君は阿笠博士からの言葉を受けたのもあるが、毛利さんに事実を言って協力を求めることはしなかった。それなのに全てが終わって五年後になった今、新一君がやったことの影響があったのを知った上で正当化しようという理由だけで明かした・・・蘭さんが言い出したことではありますが、そうする事を選ぶというのであればハッキリ言って都合が良すぎるんですよ。いくら不測の事態があったからとは言え、今まで黙ってきたことをその感情一つで明かすのですからね」
「っ!・・・そうしたら、おっちゃんが怒りを覚えて納得しない可能性があるって言うのか・・・」
そこから要約すれば今まで力不足と見て何も言わなかったがそれで被害を与えたことを正当化しようとすることに怒りを覚える可能性があると安室は言い、新一もその可能性にたまらず苦い顔を浮かべた。決して事実を明かしても大丈夫だなどと確信して言えないその状況に。
「で、でもお父さんなら仕方無い事だったって言ってくれます・・・」
しかし蘭は小五郎なら許してくれるはずだと不安げながらも、希望を覗かせるように口にする。と言うよりは言っても大丈夫だと信じたいだけなのだろうが・・・
「なら百歩譲って毛利さんは納得してくれるとしよう。だが妃弁護士に頼人君・・・特に妃弁護士が納得してくれるとは僕は思いませんよ」
「えっ・・・!?」
安室はそんな希望は通じないだろうと二人の名・・・特に英理の事を強調し、蘭は何故と戸惑いを大きくした声を漏らした。
「どうして英理の方が納得してくれないって言えるの、安室さん・・・?」
「単純な話として、妃弁護士がそんな甘えを許すような方ではないと見たからですよ。それに妃弁護士も言ってみれば貴女方に騙されたは言い過ぎだとしても、少なくとも何も言われないままにこの五年を過ごしてきたのです。それなのに先程の妃弁護士を見て全てを話したとして、そうなのかと軽く笑ってすぐに全てを許すというような方だと貴女は言えますか?有希子さん」
「っ・・・正直、英理の性格を考えるとそれは有り得ないとしか言いようがないです・・・むしろ彼女の事だからなんで公安だとかFBIみたいな人達が絶対に喋らないようにと言ったのに、それを簡単に翻した事を批難すると思います・・・」
「そ、そんな・・・」
ただそこで二人・・・特に英理の事を上げる安室に有希子はどうしてかと聞くが、返ってきた答えにたまらず表情を歪めて顔を背けるその姿に蘭から声が漏れる。蘭自身英理の性格を知っているのもあって、決して大袈裟ではないどころか十分に有り得ると感じてしまった為に。









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