一方的な正しさは許される物ではない

「・・・さて、こうして移動の時間があったから色々と考えることも出来たでしょうが・・・毛利さんに日本に帰ってきてもらうことをまだ諦めてない方がいるかどうかをお聞きする前に言わせていただきますが、毛利さんに帰ってきていただくように考えるのは止めてください」
「なっ・・・!?」
「なんで安室さんがそんなことを言うんですか・・・!?」
・・・それで工藤家のリビングに入って一息ついた所に早速と安室は小五郎から手を引くように言い、新一と蘭は批難めかせた声を上げる。
「何でも何も、毛利さん達が話した事の中身を考えれば当然の事さ。幸いにと言っていいかは分からないが、毛利さんは麻酔を撃ち込んだのは誰かという事に関しては分からないと言っていた。しかし麻酔を知らず知らず撃ち込まれた事による不審は間違いなく毛利さんの心に根付いている・・・その事からあの場では平気な様子を浮かべてこそいたが、毛利さんはアメリカで平穏な暮らしをしていることもあいまり日本にいること自体がトラウマになっている可能性があります」
「なっ・・・そ、そんな・・・!?」
「信じたくないという気持ちは分かりますが、毛利さんの性格を考えてみれば有り得るのではないのですか?元々毛利さんは海外で暮らしたいだとかそういった思考に憧れを持たないどころか、英語を覚えることすらなかった人です。それが頼人君の話では向こうでも問題ないといったように働いているということから、少なからず言えることはコミュニケーションなどは取れていると見られます。そして先程日本にはもう戻って暮らさないと強い意志を見せて言い切ったあの姿・・・この事からトラウマがあるかどうかは確定してないにしても、今の毛利さんを説得する事がどれだけ難しいかを象徴している。そしてもしトラウマになっているとしたなら、いつあの普通に振る舞おうとしていた様子が情緒不安定な物に変わるか分からない・・・そうなったとした場合、君に蘭さんは毛利さんに対して責任を取れるというのかい?」
「そっ!?それ、は・・・」
安室はそんな反応に平然とした様子で小五郎にトラウマがある可能性についてを述べた上で責任との言葉を用い、新一はたまらずに視線を背ける。もしもの可能性がいかに自分にとってなってほしくないことか、それが新一にとって重くのし掛かってくるものだったために。
「だったらお父さんに言えばいいじゃないですか、もうあの組織のせいで新一がやったことだって!」
「蘭・・・」
「もう私、耐えられないわ!あんな風に新一がやったことを言われることもそうだけど、誤解されたままでお父さんとずっと離ればなれだなんて!そんなの私、嫌よ!」
だが蘭がここに来て感情を爆発させたように言えばいいだろうと言い出したことに、新一は複雑そうな表情を浮かべた・・・先のホテルで取り付くしまもなく帰された事に、事実を知らないからこその立場で話す小五郎達に、自分達の事を言えないジレンマ・・・これらを合わせた上で元々感情的になりやすい蘭からすれば、今まで我慢していた物が爆発するのもそうだが手っ取り早い解決方法を口にするのはある意味当然だと理解して。
「・・・本当なら組織に関することを口にするなら貴女をどんな手段を用いてでも止めるというのが僕の立場なら正しいのでしょうが、あえてこのような形で言わせてもらいます・・・それで毛利さん達が納得してくれる保証などあるんですか?」
「え・・・?」
ただ安室はそんな爆発した怒りに動揺することがないばかりか、逆に冷静に見つめ返しながら問い返した言葉に蘭はどういうことかと声を上げた。なんで納得などという言葉が出てくるのかと。









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