一方的な正しさは許される物ではない

「・・・今までその事を言わなかったことに関してはお詫びします。そして蘭、お前にもこの事を言わなかったのは済まなかったと思っている・・・その上で言わせていただきますが、もう俺はまた日本に戻ってきて暮らすつもりはありません」
「お父さん・・・!」
「悪い、蘭・・・だが結婚式前に頼人も合わせて言った事も本当の事なんだよ。今の俺が探偵に復帰した所で不規則な生活なんか出来ねぇし、今言った理由も合わせるなら日本に帰ったならどこの誰かは分からねぇがまた俺に麻酔を注入してくることもねぇわけじゃねぇ・・・そう考えると前のように探偵なんか出来るなんて思えねぇからな・・・」
「っ・・・!」
「「「・・・」」」
そしてその上で頭を下げて日本に戻る気はないと強い意志を見せた上で弱ったような表情を浮かべる小五郎に、蘭は必死に言葉を探そうと表情を変えていき工藤一家は痛みを我慢するような表情を揃って浮かべていた。
「・・・私もこの人と前に話をしたから言わせてもらいますが、もうこの人に無理に日本に帰ってきてもらうべきではないと思いましたし、探偵以外の職業での復職も望ましくない以上は尚更です。ですのでこの人に関してはもう無理に日本に帰るように言わないでください」
「お母さん・・・!」
「蘭・・・貴女ももう大人で結婚もした身。それに加えてこの人はもうアメリカで頼人と共に暮らしているの。それなのに貴女が共にいたいという理由だけでこの人に無理をさせるのが正しいと思うのかしら?アメリカでの職を辞めてもらい今の住居も引き払い、その上でまた移動費もかけて日本に戻ってきてもらいいつ麻酔を注入されるか分からない恐怖と戦いながら、まともに職にも就けない状況にこの人が陥りかねない・・・それでも貴女はこの人に帰ってきてほしいと言うの?」
「そ、それは・・・」
「英理、ちょっと言い過ぎよ・・・」
「いいえ、有希子。同じことを言うようだけれど、もう蘭もそうだし新一君も大人で結婚した夫婦よ。子育てであったり困ったことがあるなら二人を手伝うことは人生の先輩として吝かではないけれども、事情がある大人を自分の都合のために事情を無視させる形で付き合わせるのは大人がやっていい行動ではないのは分かるでしょう?」
「・・・それは・・・」
更にそこに英理までもが加わり蘭がどうにかしたいと言うようにしていた所に有希子がフォローに回ろうとするが、すぐさまの反論に言葉を失う。この辺りは英理が弁護士としての弁が立つ上で、人としての道徳を説いた物であった為に。
「・・・すみません。これまで黙って話を聞いていましたが、今日はこれまでにして僕達は退散しませんか?このまま行けば話は平行線のままで進みそうですから、少し間を空けた方がいいと思うんですが・・・」
「・・・確かにそうですね。ただ蘭ちゃんは・・・」
「今の状況で蘭さん一人を残すのは良くないでしょう。僕達と共に場を離れて落ち着いてもらった方がいいですよ」
「・・・そうですね。では我々はこれで失礼します、毛利さん」
「はい、優作さん」
そんな空気に唯一血縁関係のない安室が場を離れることを提案し、優作も頷いた後に頭を下げてから部屋を退出していく。後ろ髪を引かれる想いを抱えていると言った足取りで後を付いてくる新一達に安室を連れ、小五郎達が頭を下げる姿になど気に止めることも出来ず・・・












・・・それでホテルを出た一同は工藤家へと移動した。すぐに戻れるような所にいれば反射的にまた話をしに行こうということを避けると共に、人にはあまり聞かれたくない話をするために。









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