一方的な正しさは許される物ではない

「ですが俺にはその答えは分かりませんでした。だから先生にはその理由を答えることは出来ず、入院期間をずっと過ごしていました」
「「「「っ・・・」」」」
だがすぐに小五郎が誰が分からなかったと口にしたことに、強張りが消えたように四人は体から力が抜けた。小五郎にバレてないという事に。
「ここから先は僕が引き継ぎますが、父さんがそういった状態だと聞いた僕は父さんを守る意味も含めてアメリカ行きを促したんです。何も対処せずにまた外に出たなら、麻酔を注入される可能性があると思いましたので」
「そんな・・・そんなこと起きるなんて・・・」
「でしたら誰がそんなことをした犯人で、その人はもうそうしないとの確約はあるんですか?」
「「「「っ!?」」」」
だが話を引き継いだ頼人が口にした問い掛けに、また四人は絶句せざるを得なかった・・・もう撃ち込んでいた張本人である新一からすれば小五郎に麻酔銃を撃ち込む理由などないのだが、小五郎の立場からすれば決してもう二度と麻酔を撃たれないと確約された訳ではないのだ。更に言うなら何故撃ち込んできたのかの理由を言うことも口止めをされているから、自己擁護もそうだが無闇に大丈夫だなどと言える筈もなく・・・ただ黙るしか出来なかった。下手な言葉を出しても自分達の立場からだけでは、どう説明すればいいのか分からなかった為に。
「・・・僕もそうですが、父さんも母さんもそういったことがあるから、ただ社会復帰をしただけでは父さんの身に何かあった場合を考えると決して安穏と出来るわけがないと思いました。ですので蘭には申し訳無いとは思いましたが、下手に父さんがアメリカにいることを喧伝されても困ると思いましたので内密にと行動してきたのです。おかげでその犯人にも悟られてないからでしょうが、今の父さんに麻酔を注入されることなく健康体を維持していますよ」
「っ・・・!」
「どうしたんですか、蘭?何か拳に力が入り込んでいるように見えますが・・・」
「っ・・・何でも、ない・・・!」
そのまま続けていかにも秘密に日本から離れて正解だったと語る頼人に蘭は力を込めて拳を握り、何かと首を傾げる頼人に我慢するように首を振り何もないと返す・・・蘭からすれば今となっては新一は愛する主人になるがそんな主人の事を家族が悪者扱いしているのに、それを言えないジレンマが苛立ちを募らせていた。新一は悪くない・・・そう一言でも言えばどういうことだとなるのは目に見えていた為に。
「・・・ここから先はまた俺が話をしますが、俺がこの事を言いたくなかったのはこれを言うことで英理や頼人以外に巻き込む人を増やしたくなかったからです。そして相手の正体が分からない以上日本にいるのも危険だという頼人の勧めもあって、俺はアメリカ行きを決断しました。それでその生活をする中でたまに向かう病院での診断で麻酔の成分が体から出てこないとの結果が出た時は、柄にもなくいつもホッとしています。もうあんな異常は俺の体に起きていないのだと確認して」
「「「「・・・っ」」」」
だが小五郎が話を自分がすると言った上でのその中身に、また四人は息を呑んだ。小五郎がこんなにもホッとしたような表情を見せているということが、いかに精神的にもキツかったのかを多少なりにも感じてしまった為に・・・そして実際は全く別の意味合いであることを四人は知らない。









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