一方的な正しさは許される物ではない

「・・・俺の体を調べた先生からは、こんな麻酔の成分が大量に出るのは有り得ねぇって言われました。結構な期間、麻酔薬を注射してこねぇとこんな量は出ないと」
「それで私が勧めて入院してもらった病院の先生の話からすれば、何らかの怪我だったり手術が必要な状況がこの人に訪れていたなら、死を覚悟してもらうだけの濃度の麻酔を注射しなければ麻酔自体が効かない程だと言われました。麻酔に体が慣れすぎていると」
「「「「っ・・・!」」」」
そんな反応を取り上げることなく話を進める小五郎と英理だが、その内容に工藤一家と蘭は総毛立ったように体を縮こまらせていた。まさか小五郎がそんな状態にまで陥っていたのかというよう。






・・・工藤一家と蘭は嘘だと思いたいし否定もしたいだろうが、二人が言ったことは真実であった。おそらくどころかまず間違いなく新一達に後で聞いたなら阿笠博士は麻酔銃にそんな副作用は起きるはずがないと思うだろうが、麻酔とはそんな甘い物ではない。

薬とは良くも悪くも常習すれば体に残るものだ。それが体に影響を及ぼすものであれば尚更だが、その例の最も足る物が麻薬だ。体を壊すほどの物であるのに、その味を知ってる引き返せない者が多数出ている。末期になれば最初に取っていた分の量では最早効果も出なくなり、命の保証が出来なくなるほどに体を蝕まれてもだ。

そう考えれば麻酔も薬である。それも量次第では人を殺すことも出来るだけの劇薬にもなりえる物だ。ただここで新一達からすれば薬の量などたかが知れているし薬を増やさなくてもおっちゃんは寝たから大丈夫だなどと宣うかもしれないが、それで小五郎が寝たのは狙いどころが首という意識を失わせるのに最適な部分を狙ったからだ。

・・・首は頭と体を繋ぐ部分であり、神経の集中している人体で重要な部分だ。そんな機関に麻酔を打てば眠気に襲われる事は避けられない所ではない。と言うよりは最早眠らされたではなく、麻酔により瞬間的に神経を支配され気絶させられたと言っても過言ではないのだ。これに抵抗するのもそうだが、慣れることなど出来ようはずもない・・・そして、麻酔の影響を体が受けるのも避けようもない。

あくまで首という場所だったから麻酔銃の麻酔に慣れることもなくいつも気を失う形になったが、体は度々麻酔銃により麻酔を撃ち込まれてきた。その事件の数は簡単に数えても十の桁で収まるような物ではなく、その期間も大きく期間を空けた物ではなく週一どころかそれ未満の期間で撃ち込まれてきた事もある・・・それなのに麻酔が簡単に抜けきるどころか、更に麻酔が体の中に溜まっていくのは当然のことだった。

・・・だがそんな麻酔についてを阿笠博士が作ったものだから問題ないとでも思ったのか、乱用してきたのが新一であり使用事実を黙認してきたのが工藤夫妻なのである・・・






「だから俺は長い間入院して麻酔を抜いていたんですが、同時に誰が麻酔なんてものを俺にこれだけ入れてきたのか・・・先生も含めて話題になりました。これは誰かが故意にやらなければ出来ることじゃないと先生に言われたのもあってです」
「「「「・・・っ!」」」」
そして話が原因について何なのかという物になったと小五郎が言うと、四人はまた強張りそうになる表情を必死に抑えようとしていた・・・組織関連の事は決して関係者以外の間では口にしてはならないと何度も何度も念を押されているからこそ、今にでも自分達がその答えを言いたいという気持ちを我慢する形で。









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