一方的な正しさは許される物ではない

「・・・取り敢えず、今日はもう私も帰ります。二人も二次会に向かうのでしょうから、遅れないようにしなさい」
「・・・うん、分かった・・・」
それで英理が有無を言わさず帰ると言った上で注意を向けると、蘭もそれ以上何も言えず頷くしかなかった。






・・・それで英理も式場を後にして新一達四人が場に残る。
「・・・新一に蘭ちゃん。明日時間はあるか?」
「明日って・・・」
「毛利さんの泊まっているホテルに行きたいんだが、付いてくるか?」
「・・・何か気になる事でもあるのか、父さん?」
「・・・今更だが何故毛利さんが新一はまだしも、蘭ちゃんにまでろくな連絡も入れることなくアメリカ行きを決断したのかを聞きたいんだ。話に筋は通っているように思えはしたが、どうにも全部話をしたように思えなくてな・・・」
「っ・・・分かった、俺も行く・・・」
「私も行かせてもらいます・・・もしそうなら、何でお母さんが私にそれを言わなかったのかも聞きたいですから・・・」
「・・・分かった。では明日、毛利さんの所に行こう・・・」
そこで優作が二人に予定についてを聞いて小五郎の元に行くと返ってくるのだが、自身も行くと言うその表情にはどこか不安そうな影がかかっていた。何か嫌な事を予感しているかのように。


















・・・それで翌日の昼過ぎ。工藤一家に蘭は英理へと連絡を取って小五郎と頼人のいるホテルへと向かった。



「・・・えっ?」
・・・それで小五郎の泊まる部屋を訪れて中に入った新一達だが、そこにいた人物を見て新一は呆けた声を上げた。
「・・・どうしたんだい、新一君?」
「いえ・・・どうしてここにいるんですか、安室さん?」
「どうしても何も、僕は昨日の結婚式の最中に毛利さんに今日行きますって約束していたんですよ。五年前はろくに話も出来ずにお別れになりましたから積もる話もありましたからね」
「そうなんですか・・・」
その視線の先にいた人物・・・それは頼人も英理もいる中で一人だけ家族以外の人物として場にいた安室の存在であり、首を傾げながら安室当人から疑問を向けられたことに何故いるのかとたまらず聞くが、笑顔を浮かべながら返してきた答えに頷くしかなかった。安室を結婚式に招待して来てもらったのは事実であり、小五郎と話をするにもおかしくない人物である為に。
「それより何の用ですか?優作さんがわざわざ俺の所に来るなんて」
「いや、それは・・・ではお聞きしますが、何故蘭ちゃんや私達にまで黙ってアメリカに行ったのですか?私達はともかくとしても、蘭ちゃんにくらいはもしも駄目だったとしてもその事は伝えるくらいは良かったのではと思うのですが・・・」
「・・・その事ですか・・・」
そんな新一のことは置いておいて優作へと来訪の理由を聞く小五郎に、何故何も言わなかったのかと聞くと何とも言いがたそうに表情を歪める。
「何か言えない訳があるのですか?」
「・・・単に言いにくいだけですが、この際ですからお話しします・・・優作さんだけじゃなく蘭達にも聞くが、俺が何の症状から入院してたかってのは聞いてるか?」
「えっ・・・それは、私は聞いてないけど・・・」
「俺もだけど・・・」
「まぁそれを知らないのは当然だ。英理に誰にも言わないようにとは言っといたからだしな」
「ちょっと何よ、理由があるなら勿体ぶらずに答えてよお父さん・・・!」
優作はその表情に追求を進め小五郎が仕方なしに答え始める言葉からの問いかけに新一も蘭も首を傾げるが、知らないのは当然と返すその言葉に焦れたよう蘭が先を促す。



「・・・んじゃ答えるが、俺が入院してた理由は俺の体内から通常じゃ有り得ねぇ量の麻酔の成分が検出されたからだ」



「えっ・・・!?」
「「「っ!」」」
・・・だが意を決して小五郎が口にしたまさかの事実に蘭はたまらず驚きを声に漏らし、工藤一家は声こそ出なかった物の端から見て分かるほどに明らかに息を盛大に呑んでしまっていた。麻酔の成分が検出される=新一がコナンの時に小五郎に撃ち込んでいた麻酔銃によるもの・・・という公式が一気に浮かび上がった為に。









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