一方的な正しさは許される物ではない

・・・そうして久し振りの新一達との再会を果たした後、式に披露宴といった行事は様々に進んでいった。大勢の人々により祝福され、幸せに笑顔を見せ涙を浮かべ・・・理想的な結婚式と言えるように。

そしてそんな結婚式も終わりになり、段々と会場から人がいなくなっていく。その中には・・・






「・・・おっちゃんに頼人がもう帰った?」
「うん・・・タクシーを呼んで会場から出たって和葉ちゃんから連絡がきたんだけれど・・・」
・・・式に着た服を着替え、スーツに身を包む新一に蘭。
そこで携帯を手にした蘭の言葉に、新一は眉を寄せる。
「あの人達ならホテルに先に戻ったわよ」
「えっ・・・?」
「頼人もそうだけど、あの人も今はアメリカ暮らしと言うのは聞いたでしょう?あの人達は昨日に日本に戻ってきたけれど、その疲れもあって早目に滞在してるホテルに帰ると私に言ったのよ。だから気にする必要はないわ」
「そうなんだ・・・」
「失礼・・・式の最中には詳しく聞けなかったのだが、二人は今どこに住んでいるのですか?」
「父さん・・・?」
そこに顔を出したのは英理でいなくなった理由を告げると、今度は優作と有希子が近付いてきて優作が二人の居場所についてを聞いてくる。
「・・・住んでいる所はここですけれど、頼人が言うにはあまりメジャーではない所だとの事だそうですが・・・」
「・・・あぁ、確かに。ここは名前くらいしか聞いたことはないが、名所と呼べる名所は無かったと記憶しているが・・・どうしてわざわざ手帳にメモを?」
英理はカバンから手帳を取り出して皆に見せるように開いて住所が書かれている部分を指指すと、優作は納得しつつメモを取っている理由を問う。
「何かあった時にと住所を聞いてメモをしていたんです。特に私は日本から離れるつもりはありませんが、もしもの事が無いとも限りませんから。ただ頼人は都会とも田舎とも言い難く観光地としては微妙であり、飛行機も日本行きの直通なんて無いから乗り継ぎをするか陸路で経由しなければならない場所だから、無理して来なくていいとは言ってくれましたが」
「・・・そうなのか、父さん?」
「あぁ、頼人君の言葉は間違っていない。住みやすい所ではあるとは聞いているが、本当に都会とも田舎とも言い難い場所で映画で使われただとか観光の目玉になるような物はない所だ。それに日本から来るには距離もそうだが時間もかかる・・・どうして頼人君はここで暮らすと?」
「あの子の性格を少なからず知っているなら分かるでしょうが、あまり賑やかなの好まない子です。都会の喧騒から離れて暮らしやすい環境を見付けてここにしたのだと思います」
「・・・頼人君の就職もそうですが、日本に帰ってきて近くで暮らしてほしいといった気持ちはなかったのですか?」
「そこについては頼人と話しましたが、向こうで暮らす方がいいという気持ちと共に仕事も在るとの事から必要以上に過干渉するのは良くないと思ったんです。当時は20にもなってないとは言え、もう大学も卒業して仕事を探す身になる程に成長した頼人をただ帰ってきてほしいという気持ちだけで戻ってきてもらうのは、親のわがままだと思いましたから」
「そうですか・・・」
「・・・あの、一体何なんですか?さっきからやたらとしつこく質問してきて・・・」
「お母さん、ちょっと落ち着いて・・・」
そのメモについてを説明する英理に優作はそこから多々質問を向けてくるのだが、その多さに少し苛立ったような声を向けると蘭が慌てて間に入る。
「すみませんでした、英理さん。ですがこうして久し振りに毛利さんと顔を合わせたのに、こうも早く帰られたので色々と気になりまして・・・」
「そうですか。ですがまだ何かお話したいことがあるのでしたら、直接あの人の所に向かってください。あさってまでは日本を出ずにホテルに滞在しているとのことですから」
「・・・分かりました」
優作もそこで理由つきで謝るが英理は素っ気なくこれ以上は本人に聞けと言い、少し申し訳なさそうに頭を下げた。何かピリピリした空気になっていて、周りの蘭達がどうしていいか分からないというのを知ってか知らずか。









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