一方的な正しさは許される物ではない

「どういうことかと思っているでしょうが、母さんからの話では退院間近になり入院する前に働いていたような探偵をやることは望まれないと先生から言われたそうなんです。体調としてあまり不規則な生活をするような事は望まれないと・・・となると父さんに残された問題としてどうやって職に就くのか、という物が残ります。探偵がダメならどうやって新たな職を探すかもそうですが、その職が父さんにとって負担にならないような職にならないような物であることも条件とするようにです」
「・・・それがどうして、アメリカに行くなんて事に繋がるんだよ?」
「父さんの元々の立場を考えてです・・・入院するまでの父さんは有名な探偵となっていたとの事ですが、そんな父さんが探偵以外の職に就いたとなれば様々な詮索に憶測が流されることになるでしょう。そうなれば父さん自身にもそうですし、職場の方にも多大な迷惑がかかり就職出来ても辞めてくれと言われるような事態になることも十分に有り得ました。そういったことを考えれば下手をすれば日本では就職すること自体が難しいと考えられました」
「・・・だから、アメリカに行ったってのか?そんな風な事にならないようにしつつ、おっちゃんが働けるようにするために・・・」
「勿論それでうまく行くとの保証はどこにもありませんでした。僕のツテで紹介出来る所に馴染めるかそうかもそうですが、そもそも父さんがアメリカに馴染めるかどうかも・・・ですので完全に移住という形でではなく、あくまでも試しとして父さんには僕の所に来てもらったんです。もし駄目だったと考えた場合、先に話をしていたなら君達に落胆を与えるかもしれないから大丈夫だと言えるまでは言いたくないと父さんが言ったこともあって、今まで君達には何も言わなかったんですよ」
「・・・そうだったの・・・」
頼人は今まで小五郎がどうしていたのかに、その周りを取り巻く環境がどうなっていたのか・・・それらを説明していき、蘭はその言葉に呆然としたような声を漏らす。この五年間で小五郎が何をしてきたのか、決して浅いと言えるようなものではない重さを感じさせる言葉に。
「・・・んじゃ、おっちゃんは頼人と一緒に暮らしてるってのか?」
「正確には僕の住んでいるところの近くです。向こうでは成人した親子が同居しているのは事情がなければ日本と違ってあまり快くは思われませんから、ある程度して落ち着いたら父さんは近くの家に移りました」
「ってことはおっちゃんは向こうでうまく行ってるってことか・・・」
「えぇ、ですから父さんの心配はいりませんよ」
「そうか・・・なら良かったよ」
ただ新一がまだ確かめたいと言わんばかりの様子で質問を向けてきた為、頼人がスラスラ答えていくと安心した様子を見せる。
「・・・ホレ、そろそろ結婚式の準備に取り掛かれ。今日の主役はオメーらなんだから、俺にばっか構ってると他に招待した人達にろくに準備してねぇ顔や姿を見せることになるぞ」
「うん、分かった!」
「じゃあな、おっちゃん!」
その空気を終わらせるよう気まずそうに小五郎は手を振りさっさと行くように言うと、二人は気が晴れたと言うように手を振り控え室の方へと向かう・・・その背の方で小五郎が疲れたような表情を浮かべ、頼人が労るように小五郎の肩に手を置いていたことなど見ることもないまま。









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