いつかを変えることの代償 中編

「・・・・・・分かった、そうなった理由についちゃ話はする・・・が、今から話す話は嘘なんかじゃなく本当の話だって事をちゃんと受け止めて聞いてくれ。いいな?」
「えぇ、分かりました」
それで少しして意を決して話をすると切り出した小五郎に明智はすぐに頷く、真剣に話を受け止めるといった様子で。


















・・・それから新一経由で話を聞いた為に多少あやふやな部分こそありはしたが、小五郎は一連の流れを全て話した。新一がとある組織に巻き込まれ体が小さくなったこと、小五郎がその新一により都合のいい探偵役になってしまったこと、組織を壊滅させた後に元に戻った新一が自分の元から離れたことが自分が名探偵と呼べる活躍が出来なくなった大本だということを。






「・・・大体こんなもんだ。有り得ねぇって言いたいかもしれねぇが、これは以前本当に全部起こったことだぞ」
「・・・成程、確かに信じがたいことですね・・・特に江戸川コナンという少年が、あの工藤新一だったとは・・・ですがこんな状況では、信じる他はないでしょうね」
「随分簡単に信じてくれるんだな」
「確かに貴方の話は現実離れしていますが、我々の状態を考えればそれくらいの事があっても不思議ではない・・・そう思ったんですよ。むしろこうやって過去に戻ってきている事の方が有り得ない事だと思いますけどね」
「・・・まぁ確かにな」
・・・そして話をし終わり明智がすんなり信じる様子に小五郎は訝しむのだが、自分達の状況の方がより不思議で有り得ないからこそとの答えに納得する。人が時を越えるという現象の方が摩訶不思議としか言いようがないと。
「・・・取りあえず事情は分かりました。貴方が名探偵と呼ばれ出した時期に江戸川コナンという少年が近くにいた時期と工藤新一が再び表舞台に立った時期・・・詳しくは貴殿方と接触した事はないので分かりませんが、前の記憶を辿ってみれば大方は一致しますね」
「・・・俺らに関わった当事者でもねぇってのに、覚えてるのか?」
「工藤新一君はよく紙面やテレビを賑わせていましたし、江戸川コナンとなっていた時もキッドキラーという呼び名で呼ばれた上でメディアにも取り上げられていました。管轄が違うとは言え、あれだけ度々派手にやっていたのなら私の目や耳にも当然届いていたので、それを思い出しただけです」
「・・・か~っ、やっぱりキャリア組ってのもそうだが、能力自体も俺なんかとは段違いだなお前さん・・・」
その上で工藤新一と江戸川コナンのタイミングについて覚えている分を口にした明智に、呆れたようでいて心底から感服したように小五郎は漏らす。すごい能力だと。
「いえ、大したことはありませんよ・・・それよりも、工藤君を巻き込んで様々な事件を起こしてきた組織ですか・・・」
「おい・・・言っとくが、あんまり深入りすんなよ。確かにあの組織の事を聞きゃどうにかしてぇとか思うかもしれねぇが、今の状況じゃ下手に手を出すのもそうだし妙な行動を起こしたら本当にどうなるか分からねぇんだし・・・何より組織の事を知ってる奴らってのは世界じゃCIAにFBIだったり、日本なら公安なんて奴らなんだ。いくら警視なんて位置にいたって、そんな簡単な事じゃねぇんだぞ。あいつらとやり合うってのはな」
「えぇ、分かっています。私一人でやれることなんてたかが知れてますし、その組織との戦いに参戦したいなどと言えば組織を知った情報源はどこなのか・・・と、どこの陣営に私を売り込んでも聞かれることは避けられないでしょうからね。毛利さんは巻き込まれたくないと言っていますし、どこの陣営も私に対しての追求は相当な物になって監視の目がキツくなるのは目に見えていますから手は出しませんよ」
「そ、そうか・・・」
明智はそんな言葉に謙遜しつつ考え込むように声を漏らしたことに、小五郎は組織に関わるなと声のトーンを落として忠告するが、思いの外理知的に考えているばかりか小五郎の事すら考えているといった返しに少し呆気に取られる。













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