端から見て分かるものがあるが、更に端から見てでなければ気付けない物がある

「ただその人はその経験を元に一儲け出来ないかというように言っていたが、今の君のように体はろくに動かないこともそうだが時間にして四十年以上も経った事だから、軒並み知り合いも亡くなっているか高齢になっていてね。だから一応その人の弟が身元引受け人という形になって転院する事になるんだが、その時には流石に諦めざるを得ないというようになっていたよ。弟さんの姿を見たのもそうだが周囲の人達の話を聞いたことからね」
「・・・それだけ、時の流れは残酷だということですか・・・」
「だと思うが・・・君やその人達もだが、未だに君がかつて眠っていた病室の他の人がベッドで眠っているのを見ていると、どちらが幸せで不幸せなのかと考えてしまう事があるんだよ・・・眠りの中で見ていた夢では自由でいて困難はありつつも、やり甲斐があるとか目的だとか楽しみといった物に向かっている・・・だが物語の終わりというような形で目覚めた先で喜んでくれる人達がいることは確かではあっても、今まで夢の中とは全く違ってしまう形になるくらいならいっそもう幸せな夢を見たまま目覚めないままずっといた方が、その人にとって幸せだったんじゃないかというようにね・・・」
「っ・・・!!」
そしてその人についてのその後についてを話した上で先生が複雑さを隠せない様子で、目覚めることがいいのか目覚めないままの方がいいのか・・・どちらの方がいいか分からないと語っていく姿に、新一は極めて辛そうに表情を歪ませながら声を詰まらせるしか出来なかった。こうして目覚める前だったり夢の中の新一だったら家族の為にも目覚めた方がいいと、迷うことなく言い切っただろうが今の自分の状態を考えると・・・優作達が待っていて喜んでくれた事は良かったとは思いつつも、どうしても頭から振り払う事が出来なかった・・・こうなるくらいならいっそ『江戸川コナン』から元に戻ることがなくても、ずっと時の流れのことなんか気にしないまま組織の事を追う夢が続いていた方が良かったのではないかと、かなりの部分で感じていた為に・・・



















・・・そうして新一は先生に何も言う事が出来ずに以降は時間が過ぎ、翌日に転院という形でその病院を後にしていった。ここが長い間貴方が眠っていた病室ですよと車椅子に乗せられ、看護師から言われても何とも言えない反応をするしかない形でだ。

それだけ新一としても衝撃が大きかった事の証拠でもあった上で、もしかしたらこの人達も同じように眠っている間は幸せだったり不自由ない生活をしているのではないかと思うと、いたたまれなくなってしまったのである。

だから新一はどういった人達が眠っているのかを見るだとか、名前くらいは知っておこうといった気も起きることなく病室の入口にある名前の書かれたプレートを見ることもなく、転院していったのであった。『フグ田サザエ』に『野比のび太』に『さくらまる子』に『野原しんのすけ』といった人々の名前など見ることも出来ないという形で・・・


















・・・夢を見ることに見たいと思う事は間違いではない。だが終わらない夢を見続けることが幸せなのか、不幸なのかは誰かに定義することは出来ない。その上で夢から覚めて解き放たれる事が幸せとも限らない・・・夢を見続ける当事者からしてもだがその夢を端から見てきた者達からしても、その夢が終わることが・・・









END









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