正しいから許されると誰が決めた?

「そして協力しない方がいい理由はまだあるが、ある意味でこちらの方が君達や僕達にとっても重要だ」
「・・・え?その理由って・・・」
「君達は毛利さんの体調次第では早く戻ってほしいとかそういう話もしたいんだろう。あの探偵事務所を早く復活させるためにもと・・・だがそうしてもらったとして、今の『江戸川コナン』がいない毛利さんが名探偵として活動出来ると思うかい?」
「「っ!?」」
だがまだあると続けられた『江戸川コナン』と小五郎の関係性と名探偵との言葉に、新一と蘭は絶句した・・・毛利小五郎が名探偵になったのは『江戸川コナン』という新一が小さくなった存在が影で推理したからこそであり、その『江戸川コナン』の存在がなければ小五郎が名探偵として活躍など出来ないと二人ともに思った為に。
「・・・僕もこのような事は言いたくはないが、『江戸川コナン』・・・いや、君がいない毛利さんでは名探偵としては活動は出来ないだろう。だが今回の毛利さんの容態に関しては休業ではなく探偵事務所そのものを手放し、入院の資金源を確保することに専念している事から二、三ヶ月程度で退院や完治が見込めるような物ではないのだろう。僕は詳しく聞いてないから何とも言えないが、それほどに用意するからには半年かそれ以上の時間が最低限必要と見ていいだろう・・・ある意味ではこうして毛利さんが世間の目から離れるのは好都合だ。探偵として活動出来ない理由として病気療養は最適だし、妃弁護士の社会的地位に妻という立場なら信用は得られるだろうしね」
「で、でもそれじゃあお父さんが入院したままに・・・」
「だったら早く無理をしてもらってでも退院してもらって、毛利さんが名探偵でないみたいな悪評が広がって欲しいのかい?それに新一君もこうして元の体に戻れた以上、最早『江戸川コナン』の時のように毛利さんをフォローなど出来ないだろう。もう君には毛利さんの家に転がり込むだけの理由もないし、何より君の今の体格もあるが君が毛利さんに推理を全部任せて推理を行わないのはあまりにも無理がありすぎる。コナン君時代ならともかく、今の君ではとても毛利さんのフォローに入るのは無理だ。すぐに破綻を来すのは目に見えているし、何より君がいない時に事件が起きれば起きるほどに毛利さんの信用が損なわれる・・・それを解決するには君や僕達が組織の事を全て話した上で君が毛利さんに事件が起きる度に推理を授けるくらいしかないだろうが、組織の件に関しては関係者以外に極秘で誰にも伝えてはならない・・・そう理解しているはずだ」
「そっ、それは・・・」
安室も多少苦い顔をした上で話をまた進めていくのだが、組織の事を口にすると新一は途端に口ごもった。






・・・普段は勧善懲悪が当然だとマスコミの前でドヤ顔を見せている新一だが、組織の壊滅に関しては徹底して口をつぐむようにと安室達から約束させられた。それは何故かと言えば組織のやってきた規模の大きさもそうだが、新一がコナンであったことがバレるだけでも社会的に大きな問題となるからだ。

大人とも言える体格の人間が小学生サイズの子どもにまで若返る・・・組織の作ろうとしていた思惑の薬とは違うが、この薬により新一だけでなく後数人程若返ってしまった人物がいる。それもその内一人はその薬の開発者と来ている。

・・・ここで問題となるのは、その薬の存在に開発者が明らかになるだけで大混乱が起きかねないことだ。新一達からすればこんな体になりたくなかったという思いはあったが、その効果は裏返してみれば年老いた肉体を文字通り若返らせる奇跡の薬と見られる可能性が極めて高い。いや、むしろそうならない方がおかしいだろう。若さを追い求める人間などどこを探してもいるものだ。

ただその薬が百発百中で人を若返らせる保証などないし、ましてやそうして若返った年寄りばかりが出るようになれば様々な問題が出てくる・・・その薬一つだけでもそうなのだ。他の案件も含めれば決して組織の事は表沙汰にしない方がいいものが多いことは新一達も口を酸っぱくして言われ、そうした方がいいと自分達も感じたからこそそうすると首を縦に振った。特に新一は小さくなった経緯から自分に追求が激しくなるだろうこともそうだが、自分達の追っていた組織とは違うところから狙われる可能性もないとは言えなかった為に。

・・・ただそうして話をした中身がここで今、重荷となって新一達にのし掛かってきた。説明が十全に出来ない重荷と。









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