帝丹高校教師冴島大河 コナン本編前

「・・・中道、お前の気持ちは分からんでもない。そやけど世の中にはきっかけがあれば変われるもんもおるが、何を言われても変わらんもんもおるんや」
「何を言われても変われない、ですか・・・?」
「そや。それこそ死んでも生き方を変える事は出来んのや。そういった奴はな」
そんな中道を真っ直ぐ見据え、冴島はゆっくりと話していく。変われない存在はいるのだと。
「俺も色んな奴を見てきたが、信念を曲げる事の出来ん頑固な奴もおれば自分の為だけにしか動けん奴もおった。それこそ堀越のように人を自分の為に利用するだけしようとして甘い蜜ばかりを吸おうとしとった奴もな」
「・・・そんな人間を沢山見てきたからこそ、先輩は変われない人間はいて由美もそんな人間だったと先輩は言うんですね・・・?」
「あぁ。お前が堀越のことを変えたかったっちゅう気持ちは間違っとらん。そやけどその事にこだわっとったらお前の性格もそうやが堀越の性格から、のらりくらりとお前がかわされとったのは目に見えとる。むしろそうして自分の為に右往左往しとる姿に一層堀越は悦に浸っとったやろう。自分の為にここまでしてくれる男がおるっちゅうことでな」
「っ・・・否定したいですけど、否定出来ないです・・・俺じゃ由美の心変わりを望んでも、あいつにやり過ごされてたんじゃないかってことは・・・」
そうして変わらない者についてを話す中でもし中道が頑張ろうとしてもとその時の事を仮定する冴島に、中道は苦い顔を浮かべながらも否定出来ないと漏らすしかなかった。一本気で真っすぐな性質を持つ中道が自分の為ならなんでも利用しようと言葉巧みに動く由美相手に、上手くいく保証などある筈がないと。
「・・・堀越に関しては言ってしまうと悪質や。結婚したい言うてもそれにハッキリ応えず、かといって否定もせず・・・仮に結婚詐欺みたいに訴えようとしたところで立件されるかどうかも怪しいところやったやろう上で、いざ離れようとしたとこで堀越を殺したもんの言うたことのような事を言って相手をどうしようもない立場にまで追い込み、自分の為に動く事を強要するのを計算しながら動いとった・・・実際に話に聞いてみて俺が率直に思った感想がそれや」
「っ・・・!」
「辛いゆうんは分かる。堀越自身も調子に乗り過ぎたから殺された上で、殺したもんも不幸になっとるのもある。そやけどな・・・」



「それでも中道、お前が俺の言葉を覚えてくれて留まるように出来たことは俺にとって救いになったんや。お前だけでも道を外さんように生きれたことがな」



「・・・え?」
・・・そんな中で由美についてや加害者についてを言いつつも、中道だけでも無事で嬉しいと微笑を浮かべる冴島に中道もだが小五郎もキョトンといったような顔になった。
「俺がお前に送った言葉については起こらんなら起こらんでえぇことやと思っとったが、それが絶対に起こらんとは決して否定出来るもんやなかった。そやからせめて何か起こった時に心のどこかにあった俺の言葉が役に立ってくれるようになってほしいと思っとったんやが、それが役に立って堀越から離れる事が出来た・・・その事に俺のやったことは無駄やなかったと思えた上で、お前自身も今は堀越の事で気が重いやろうがそれでも家庭を持って幸せにやれとる事を嬉しく思うんや」
「せ、先輩・・・!」
「そやから中道・・・堀越や堀越を殺したもんの事を考えるなとは言わんし、すぐには気は晴れんやろうしこんなことを言われたくないかもしれん。けれど俺はお前が今こうしておられとることは否定せぇへん。そやから堀越達の事を受け止めた上でお前やその家族の事を大切にして、お前自身もやが家族にも道を踏み外させんように生きてほしいと思っとる・・・それが堀越の事を受けた上でお前がこれから生きる中で必要な考えやと思うからな」
「っ!・・・ありがとう、ございます先輩・・・そう、言ってくれて・・・!」
「中道・・・」
・・・気持ちを奮い立たせつつも戒めを持った言葉を向ける。
そんな冴島からの決して優しいだけでない言葉は却って気持ちを落ち込ませていた中道の心に深く響き、礼を言い深々と頭を下げる中で小五郎のいる位置だからこそ見えた瞳から溢れる涙に、小五郎はただその姿を複雑そうに見詰めるしか出来なかった。下手な慰めも貶めも出来ない状況だと分かるからこそ、中道をただ見守るくらいしかないと・・・









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