正しいから許されると誰が決めた?

「駄目よ。あそこは数日の内に探偵事務所に貴女達の居住スペースとしての契約を終えて、空きテナントとして貸し出すようにとの手続きは済ませてあるわ。今からそれを差し止めて覆すなんて事は業者の人にも余計な手間を取らせることになるし、あの人の望みとは違うことになるわ」
「そんな・・・」
・・・それで英理の事務所に来た二人は早速と話をするのだが、机に座り立って話をする二人を見上げる形で厳しく答えを返すその姿に蘭は悲痛そうな表情を浮かべる。
「・・・なぁ、おばさん・・・おっちゃんに会うことは出来ねぇのか?入院費の事に関しちゃおっちゃんの意地だったりもあるのは分かるけど、だったらせめておっちゃんと話がしたいんだ。どんなに具合が悪いのかも見てみたいしさ・・・」
「そうよお母さん!お父さんに会いに行こうよ!」
しかし新一が諦めきれないというように小五郎へと会いたいと願い、蘭もまたその言葉に勢いよく同意する。せめて実際に会わせてほしいと。
「生憎だけれど、それは聞き受けられないわ」
「なんでよ!」
「あの人に入ってもらった病院のセキュリティの関係よ」
「・・・え?」
だが拒否をあっさり返す英理に蘭は怒りを露にするが、セキュリティと出てきた事に新一共々キョトンとした様子に変わる。何故病院にセキュリティなどという言葉が出てくるのかと。
「貴女の方がよく分かっているでしょう?前のあの人と違って今のあの人はメディアにも少なからず顔が出ていて、多少なりとも有名人と言える立場にあることは・・・そんなあの人の事を考えると、下手に情報が漏れやすい病院に入ってもらう訳にはいかないと思ったから、私が信頼している病院に内密に入ってもらったわ。患者の情報を妄りに流出させることはなくて、腕も確かな医者がいる病院にね」
「で、でもセキュリティって・・・」
「あまり詳しく言えないけど、そこは隔離病棟がある病院なのよ。たまに聞くでしょう?有名人だったりが治療の為に一般的な病棟ではなく、世間から隔離された特別な病棟に入ったといったニュースとかを・・・別にそういった人達だけがそんな病棟を使うのではないけれど、あの人の容態もそうだけれど知名度の事を考えればその病院に入ってること自体を知られる事を避けたいのよ。あの人がいなくなればマスコミが話題だとばかりに、私や貴女の元に来かねない・・・そう考えると貴女はあの人がいる病院の事は知らない方がいいわ。もし貴女がどこにあの人がいるかを口にするだけでもマスコミが病院に来て、病院で働いている人達もそこに入院している人達の迷惑になる可能性があるもの」
「・・・セキュリティって、お父さんだけじゃなく病院の人達に患者さんの事も考えてお母さん言ってたんだ・・・」
「そうよ。それに病院自体のセキュリティとして隔離病棟は見舞いに来たいから来たと言うだけで、簡単に隔離病棟の患者さんに会えるようなものではないわ。それこそアポを取って所定の時間以外に会うくらいしか病院側は認めない・・・そしてそのアポで会える人もセキュリティの関係上、基本的に病院側が出したルールを呑んでくれた上で許可した人だけになるのだけれど、あの人が入院する時に貴女はそこにはいなかった。だからすぐにはあの人には会えないのよ」
「そんなぁ・・・」
そのセキュリティがいかなものかにこちらがどのように配慮をしているのか・・・英理が語るそれらの徹底さに、蘭は声と体から力を抜かしてしまう。小五郎に簡単に会えないのが嫌でも分かってしまう話だった為に。









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