正しいから許されると誰が決めた?

・・・毛利小五郎。前までは探偵としてその名を知る者など、彼に近しい人物くらいしかいなかった。彼がよくある探偵としてはあくまでも普通に毛が生えるかどうかレベルであることもそうだが、そもそも探偵が有名になるということなど本来有り得る物ではなかった為に。

しかし毛利小五郎は次第にその名を広めていった。それまでに有名だった工藤新一という高校生探偵がいなくなり、その工藤新一と入れ替わるような形で有名になるようにだ。

ただそんな小五郎は有名になって得られた恩恵に預かりこそはしたが元々そんな有名になりたいだなどという欲など持っていなかったこともそうだが、その小五郎にもう一人子どもがいたことを知っている者はそうはいなかった。そしてその子どもが小五郎にどのような影響を及ぼしたのかも・・・


















「・・・やっぱり異常、としか言いようがねぇか・・・これは・・・」
・・・時間にして平日の昼。自身の探偵事務所にて、小五郎は机の椅子に座りとある紙を見ながら苦い表情を浮かべていた。
「・・・この事に関して何が理由なのか・・・多分じゃあるが、見当はついている。だがもしそうだとしても、それが正しいかどうか証拠がねぇんなら何にもなんねぇし、どうしてそうなったのかなんて理由も分からねぇだろう・・・となりゃやっぱり人手は必要か・・・あいつの手はあんまり借りたくはねぇんだがな・・・」
そしてそのまま表情を変えずに誰かの存在を口にしながら電話に手を伸ばす。いかにも苦渋の決断をするといったように・・・


















・・・小五郎が影でとある行動を起こしていた。その事についての詳細を知る者などほとんどいないままに時間は進み、とある変化が訪れた。






「・・・泊まりだぁ?それも数日かかってコナンも行くだと?」
「うん、ちょっとね」
「また園子と行くってのか?」
「そうなの。だからその間一人でお願いね、お父さん」
「・・・わーってるよ、いつもの事だからな」
・・・探偵事務所の上にある居住スペースにて食事をしていた小五郎に娘の蘭に、居候しているコナン。
そこで外泊の事についてを切り出す蘭と隣の笑顔のコナンに、小五郎はぶっきらぼうに返す。何度もあったことを一々気にする必要などないといったよう・・・その内心を悟らせぬよう・・・






・・・それで翌日。朝食を終えた蘭とコナンが出発したのをビルの入口まで降りて見送った小五郎は携帯を取り出す。
「・・・もしもし。蘭とコナンは事務所を出た。今どこにいる?・・・分かった。そっちに向かう」
そのまま電話に出ただろう相手と話をし、小五郎は簡潔に会話を済ませ電話を切る。
「・・・こんな形でここを出ることになるとはな・・・」
そして小五郎は後ろを振り向きビルを見上げながら、寂しげな表情を浮かべた。今までの記憶を思い出すような形で・・・


















・・・それから数日後、蘭が毛利家へと帰ってきた。数日前には連れていった筈のコナンの姿はなく、代わりに同じ年頃の少年であり幼なじみである新一と共に。









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