探偵の想う矜持に力は更なる暴に砕かれる

・・・そこからのスペックの攻撃は車から出た花山を警棒で容赦なく殴った後に拳銃で両膝を撃ち抜くというものだったが、更にそこで花山の頭を容赦なくコンクリートに何度も何度も打ちつけるという物であり、そのあまりの様子に新一は顔を青褪めさせてしまうしか出来なかった。新一も試し割りのトリックについては聞いたことはあるが、それを人間の頭で何度も何度も実践すれば人の頭なんて簡単に壊れてしまうのに、そんなことを全力で容赦なくやれてしまうスペックの姿を見てだ。

だがそれでも花山の頭は壊れずにいたが意識朦朧といった所にスペックが最後のトドメと、持っていた拳銃の銃口を口に咥えさせて引き金を引くのだが・・・そこで花山が取った行動が顔を逸らして頬を撃たせる事で死ぬことだけは避けるという物だったことに、新一は戦慄せざるを得なかった。命を守る為に最善の手段を取ったと言える行為のように思えるが、抉れた頬の肉を更に抉るような状態になることを容易く選べたその精神力を目の当たりにしてだ。

そしてスペック自身も呆気に取られたといった状態になった所で花山がスペックを転がし、馬乗りになってスペックの顔面を花山が何度も何度も殴る光景を前にした事で・・・もう一人の目撃者の警官は花山に対する憧れを抱いたのだが、新一はあまりにも自分の知る世界とは違い過ぎる光景や人物を前にして絶望を抱いたのである。二人の戦いを見るまでは何だかんだで今までのように最終的には死刑囚達を捕まえられるだろうと、安室達の言葉は大袈裟な物を更に大袈裟にしたものだと高を括っていたのだが・・・それらが一切の嘘偽りのない事実だったことを心の底から理解した為に。

そして新一が絶望を抱く中で花山がスペックを倒して勝利となったのであるが・・・ただここで安室や優作達もそうだが、新一当人も考えなかった心がへし折れた理由に関してはもう一つあった。それは新一自身には確かに強さについての憧れやらは無かったが、それでも警察もそうだし公安やFBIにCIAといった機関ならより巨悪に立ち向かえるのだから、自分はその巨悪を暴く探偵としての役目を果たすと共に助けになれば後はそういった存在がやってくれることだという・・・いわば他責思考な考え方をしていたからであった。たまに自分しか対処出来る者がいないだったり遠距離攻撃が必要な時は物を蹴ってぶつけるくらいはするが、犯人の検挙だとか逮捕といった行動はそんな存在だったり自分以外が主にやることだと。

これは新一が事件に出会うことが周囲にも普通だと思われるくらいの時には目暮達警察との関係が普通に出来ていたこともそうだが、今は彼女となっている蘭が空手を用いて犯人と対する事が多かったのもまた大きな理由だった。そういったことから新一が直接的な戦闘ではあまり強くないといった状態であっても、蘭や目暮達といった存在がいるから新一は自分で強くなって対処することについてを考えることはなかったのだ。そしてそんな考えは蘭や目暮達の上位互換の存在と言える赤井達と知り合って、共に困難をくぐり抜けていって仲を深めたことで赤井達がいるならと尚更にそんな考え方になっていたことを新一自身は考えることもなかった。

だが今回そんな赤井達が条件をクリア出来ないなら絶対に死刑囚達には手を出さないとハッキリ言った事もだが、その理由ややって来たことを聞いても新一はそれらを信じられなかった。自分達ならやれるというか、公安達なら巨悪に立ち向かえるだろうに何で臆病風に吹かれるのだと。

しかしそんな風に信じていた筈の面々に失望していたことが、花山達の戦いを実際に見たことで安室達という面々が揃っても、殺さずに済ませるようにしては勝てないと断言出来る暴力が存在するのだと認識すると共に・・・自分という探偵が持つ力が通じない存在がいるなんてという絶望に繋がったのである。いつも何だかんだで何とかなってきたのにという自負なんて、スペック達のような存在に出会って無かったから上手くいっていただけなのだと。

・・・ただそこに新一自身の力など赤井達と比べても微細でしかない事など新一は全く感じていなかった。長い事自分がそんな悪を捕まえる為の力を持つ側に共にいるという自負があるからこそ、赤井達も近くにいるなら自分と共に動く力というようにあたかも自分自身の力であると錯覚していたのであるが・・・もうそれらをまとめてもスペック達には敵わないと感じたからこそ、新一の心はへし折れてしまったのだ。いかに他責思考でもその責任先である公安達ももう敵わないと思える暴に出会ったからこそ、自分ではどうしようもないと・・・









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