領域を踏み荒らす者に渡す報い

「・・・あの、話題を少し変えますけど、蘭に対しては新一って言うか『コナン』の事はどう取り繕ったんですか?」
「それに関しちゃ急遽仕事の都合がついて親が迎えに来たって言ったら、残念そうにしちゃいたが納得はしてたから問題はねぇよ。まぁこの辺りはまだ関係が出来てねぇ時だったからだろうが、もうちょい時間がかかってたら色々面倒になってたろうがな」
「あぁ・・・コナンの演技をしてる新一の事を気に入ってましたからね。ただ何となくあの演技もどこまで通じていたかって思うと、少しゾッとしますね・・・あいつがずっと蘭にバレずに演技を出来るなんて保証もないと言うか、嘘をつき続けられるとも思えませんし・・・」
「現に俺はともかくお前らにバレちまったからな・・・蘭にバレたら尚更ここにいさせろだとか新一に協力するべきだって言ってきてただろうな・・・新一を元に戻させる為に、その男達を仕事がない時はずっと探せって俺をせっつかせる形でな・・・」
そんな空気から話題を変えようと蘭についてを聞くカミーユの声に小五郎は答えるのだが、こちらは新一達の時と違い疲れたような表情を浮かべる。蘭が自分の娘であることもそうだが、その娘は自分ではなく新一の味方をするだろうことが容易に目に浮かんできた事に。
「・・・まぁそんな心配ももう必要はないだろう。あんな風に新一が小さくなっちまったってことは未だ信じられねぇって部分は否定出来ねぇが、だからっつってそいつらを追って捕まえりゃ簡単に元に戻れるとも思えねぇしな。それにあんだけ優作さん達には色々言ったからな・・・少なくともそうそう簡単には帰ってこれねぇ筈だし、蘭もそれで新一が戻ってくるのに時間がかかりゃ諦めてくれるかもしれねぇしな」
「・・・そうですね。人が簡単に体を縮ませるなんて事もそうですけど、そんな体を簡単に元に戻せるなんて思えませんからね」
ただもうそれも心配はないだろうといったように漏らす小五郎に、ルルーシュも同意の言葉を返すが・・・その言葉には断言出来る程の強みは伴われていなかった。


















「・・・毛利さんはあぁは言ったが、戻れないという前提で話をするのは止めておいた方がいいだろうな。有り得ないなんて有り得ない・・・そう言ったセリフもあるが、今の俺達の現状の方がもっと有り得ないと思うからな」
「あぁ・・・だがあそこまで毛利さんも決意を固めたんだ。それに新一の話に出てきたその男達をどうにかして自分の体を戻すまでは帰らないだろうが、それこそ生半可な事じゃ簡単に元の体には戻れないだろう。そして戻れたとしてもあんなに強く決意を固めた毛利さんなら、余程の事が起きなければ大丈夫だと俺は思うよ」
「そうだな、そう信じよう・・・」
・・・それで小五郎と会話と食事を終えたルルーシュ達は自分達の家に帰ろうとするのだが、先程の新一の体について決して安心出来ないと自分達の体験もあって口にするルルーシュにカミーユは励ましの声をかけ、不安そうではあるが頷いて返す。新一に戻って欲しくないわけではないが、小五郎の事を考えれば戻れないというのが望ましい・・・そういった気持ちがあるために。


















・・・それ以降、小さくなった新一の姿を米花町近辺で見ることはなくなった。そして蘭はその事に関して不満を小五郎や二人に口にしていたが、すぐに予想通り『コナン』の事を仕方無いと言って気にしなくなった。やはり関係性が然程出来ていなかった時だったため、そこまで執着することはなかったのだろう。

そんな風にして『コナン』となった新一が消えてから小五郎も含めて優作達と連絡を取ることはなかったが、別にルルーシュ達にとっては然程気にするような事ではなかった。むしろ下手に新一達の事を気にして連絡を取るような事をすれば、付け入る隙を与える可能性があったために連絡は取ろうとはしなかった。






・・・本来であれば無理矢理でいて勢いのままに小五郎の元に転がり込み、事実を知る仲間を作っていく筈だった新一。だがルルーシュとカミーユの二人により小五郎どころか、生まれ育った街からも離されてしまった。新一が黒ずくめの男達を捕まえることが出来るか、元の体に戻れるのか・・・その結末については誰も知らない・・・






END









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