・・・ただそもそもを言うなら新一がそうなった理由は優作達夫婦の教育の仕方だったりもあるし、新一の能力の高さや子どもの頃からの考えの確立の仕方があまりにも早かったのもあるが、新一が使える金を無尽蔵に優作達が出してきた事も理由だった。

これは優作達としては新一が成長していくにつれて金のかかる趣味などもなく浪費癖など見受けられないのだからと、中学に入った頃からの蘭とのデートとなった時には有希子が特に顕著になる形で男としてデートの金を出させるなというよう、多額のお小遣いを臨時で渡したりしてきた。そしてその結果として明らかに同年代の子ども達と比べて、ランクの高いデートをしてきたのだが・・・そこで恋愛において致命的とも言える新一の考え方を二つ生んでしまったのである。それは自分が大人より立派に蘭をエスコートしているという自信に満ちた考え方を身に付けた事と、自分がバイトなどで金を稼いでいる訳でもないのにちゃんと自分の中でこれだけの支出なら払ってもいいだとか、ここまでは流石に駄目だというような考え方を身に着けてすらいないという物だった。

まず前者に関してというか蘭はそういったデートに関しては確かに付き合うことになって、しばらくという頃までは事件が起きること自体は抜きにしても満足といった様子を見せてはいた。そして新一としても男としての甲斐性を果たした事や蘭の気持ちを引き寄せたことから満足して、一見はウィンウィンという感じに終わったが・・・だからこそいつまでも進まず変わらない関係に蘭は様々に焦れていき、気持ちは離れていった。

そして前者もそうだが後者がそれ以上に、新一に影響を及ぼした物が何かと言えば・・・周りの助けや物資といったありとあらゆる物も含めて限られた状況にないからこそ、実の所として是が非でも蘭を落としたいという気持ちが芽生えなかった事にあった・・・なまじ人は自分の手元に物がありすぎると、物欲という物が失われる物である。ましてやその時の蘭は新一に惚れていて付き合ってはいなくても、心は新一に捕らわれているような物であった。

故に新一には差し迫って蘭と結ばれたいという焦りもなかった。そこら辺にいるような女が欲しいナンパ男がどれだけ自分の懐事情と向かい合いながらも、目当ての女と結ばれセックスするために四苦八苦しているのかというのを考えとしては理解はしても、気持ちとしては決して理解出来ないというようになる形でだ。

だがそのように自分は満たされているしちゃんとやっていると思うからこそ、関係がそれ以上に進まないし変えようともしない新一を蘭は見限るという結果になったのであり・・・有希子達ももうこぞって新一達の元から離れると共に探偵になるまでは金こそは出すけれど、以降はもうサポートはしないとなって色々と新一は失っていく事になるのは確定しているのである・・・そしてそこで変われなければもう新一は孤独に生きていくしかないだろうことは・・・


















・・・そうして時間は進み新一達が大学を卒業することになって、蘭の結婚式が行われたのだがそこに新一が呼ばれる事はなかった。これは長い間付き合っていた元カレを呼ぶのは流石にという事からもある上で、蘭のことをまだ引きずりまくっている新一を呼ぶのは止めておいた方がいいと有希子が言ったからだった。

故に新一は式に向かうことが出来ずに有希子達からの幸せそうな結婚式だったという報告を受け、ただ打ちひしがれたようになるしかなかった・・・ただ案外と言うかロマンチストな傾向もある新一は式場に突如乱入して花嫁を連れ出していくというシチュエーションを思い浮かべたが、今となっては十中八九なんて一か八かが有り得るような物ではなく、もう失敗するとしか思えないと流石に考えたことからそこは断念することにした。

ただそうして最早蘭の事については諦めざるを得ないと事実の受け入れだけはしたのだが、そこからまた別の問題により心を乱される事になった。周囲の人々がこぞって自分から離れていくという問題に。









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